スピノール表現
今回は前回に引き続き、スピノール表現を扱う.理解を深めるために演習を行いながら進めていこう。
問題
B、γ5がそれぞれ(21)、(23)で与えられると仮定した場合、相似変換(20)と(22)が成り立つことを証明せよ。
解答
まず(20)が成り立つことを示す。μ=0なら自明に成り立つ。μ≠0なら(γμ)†=−γμなので、以下のように(20)が示せる。
{γ0,γμ}=γ0γμ+γμγ0⏟(18)=γ0γμ−(γμ)†γ0=0⟺γ0γμγ−10=BγμB−1=(γμ)†
次に(22)が成り立つことを示す。これは(17)を用いてγμを1つずつ左に移し替えていけば良い。例えばμ=2なら、以下のように(22)が示せる。
iγ0γ1γ2γ3γ2=−iγ0γ1γ2γ2γ3=iγ0γ2γ1γ2γ3=−iγ2γ0γ1γ2γ3=−γ2γ5⟺γ5γ2γ−15=−γ2
問題
(23)で与えられるγ5に以下の性質があることを示せ。
{γ5,γμ}=0 、 γ25=1l 、 γ5=γ†5
解答
{γ5,γμ}=0が成り立つことは(22)より明らか。γ25=1lが成り立つことは次のように計算することで示せる。
γ25=−γ5γ0γ1γ2γ3=γ0γ0γ1γ2γ3γ1γ2γ3=−γ1γ2γ1γ3γ2γ3=−γ1γ1γ2γ2γ3γ3=1l
γ5=γ†5が成り立つことは次のように計算することで示せる。
γ†5=(iγ0γ1γ2γ3)†=(γ3)†(iγ0γ1γ2)†=γ†3γ†2(iγ0γ1)†=−iγ†3γ†2γ†1γ†0=iγ3γ2γ1γ0=iγ2γ3γ0γ1=iγ2γ0γ1γ3=iγ0γ1γ2γ3=γ5
問題
γ5はトレースレスで、さらに[γ5,Jμν]=0を満たすことを示せ。但し、Jμνは(19)で与えられる。
解答
γμγν=12(γμγν+γνγμ)+12(γμγν−γνγμ)=−ημν+(Pauli matrices term)
これについて両辺トレースを取るとPauli 行列に関する部分は0となるから、
tr(γμγν)=−4ημν
となる。これらを利用すれば以下のように計算できる。
tr(γμγνγργσ)=tr{(−2ημν−γνγμ)γργσ}=−2ημνtr(γργσ)−tr{γν(−2ημρ−γργμ)γσ}=8ημνηρσ−8ημρηνσ+tr{γνγρ(−2ημσ−γσγμ)}=8(ημνηρσ−ημρηνσ+ημσηνρ)−tr(γμγνγργσ)
後はここに(μ,ν,ρ,σ)=(0,1,2,3)代入すれば、
trγ5:=itr(γ0γ1γ2γ3)=−itr(γ0γ1γ2γ3)=−trγ5
となるから、確かにγ5はトレースレスであると言える。さらに、後半部分も以下のように示すことが出来る。
[γ5,Jμν]=i4(γ5γμγν−γ5γνγμ−γμγνγ5+γνγμγ5)=i2(γ5γμγν−γμγνγ5)=0
問題
ガンマ行列を用いて、Jμνが
Jμν=(σμν00ˉσμν)
と与えられることを示せ。但し、
σμν=i4(σμˉσν−σνˉσμ) 、 ˉσμν=i4(ˉσμσν−ˉσνσμ)。
解答
(19)を用いると、以下のように計算できる。
Jμν=i4{(0σμˉσμ0)(0σνˉσν0)−(0σνˉσν0)(0σμˉσμ0)}=(σμν00ˉσμν)