スピノール表現
−γTμをγμに関連付けるために、行列Cを導入する。
CγμC−1=−γTμ
但し、Cは次の式を満たすように与えられている。
CC†=1l 、 C=−CT
Cは荷電共役行列として知られている。(20)と(28)を用いると、次にのようにγ∗μもγμに関連付けることが出来る。
γ∗μ=−BCγμ(BC)−1
これらの相似変換を用いると、スピノールにおける射影条件を定義することが出来る。特に、Lorentz 代数の下でDirac スピノールは可約であることが分かる。さて、次のような2つの異なる射影条件を定義しよう。
- Weyl スピノール
γ25=1lなので、γ5の固有値は±1である。更に、γ5はトレースレスであるので、2つの固有値+1と2つの固有値−1を持つ。今、γ5が対角的になるように基底を採る前に、トレースレスになるように固有値を決定しているから、γ5がトレースレスになるには、その4つの固有値は2つが+1、残り2つが−1になるしかない。γ5が対角的になるように基底を採ろう。我々はJμνとγ5が交換するということを知っている。Jμνは2つの2×2ブロックでブロック対角的であるから、従って、可約である。実際、Dirac スピノールΨを、次の式で定義されるような2成分の右巻きWeyl スピノールと左巻きWeyl スピノールに射影する。
ΨL=(ψL0)=P+Ψ、ΨR=(0ψR)=P−Ψ、P±=12(1l±γ5)
注意として、2Lと2Rで書かれるWeyl 表現は等しくない。複素共役の下で2Lと2Rは互いに写り合う。
- Majorana スピノール
γ∗μとγμはBCに関連づけられているので、Jμνと(Jμν)∗は次のようにBCを用いて書くことが出来る。
BCJμν(BC)−1=−(Jμν)∗
従って、複素共役を取ったDirac スピノールΨ∗はLorentz 変換の下で同じように変換するので、Lorentz 共変性と矛盾することなく次のような実条件を課すことが出来る。スピン0の粒子をあらわすKlein-Gordon 場の場合、実場は粒子と反粒子が同一の粒子に対応し、複素場は粒子と反粒子が異なる粒子に対応していた。複素場に実条件φ∗=φを課すと実場が得られるのだった。
一方で、スピン1/2の粒子の場合、Dirac 場は粒子と反粒子が異なるスピン1/2の粒子をあらわす場であり、Majorana 場は粒子と反粒子が異なるスピン1/2の粒子をあらわす場である。粒子と反粒子が同一のスピン1/2の場を定義するにはΨ∗=Ψを課せば良いように見えるが、この2つはLorentz 変換の下での変換性が異なるので、この式は相対性原理を満たせない。故に上記のような条件を採らなければならない。因みに、(32)と(BC)∗BC=1lを、あるいは(32)と((BC)∗BC=1lと同値な)荷電共役の定義Ψc=(BC)∗Ψ∗をMajorana 条件と呼ぶ。
Ψ∗=BCΨ
この射影条件は2次元の表現としても定義することが出来て、Majorana スピノールと呼ばれる。Ψ∗∗=Ψであるから、演算子BCは(BC)∗BC=1lを満たさなければならない。