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【場の量子論と対称性】第06講 スピノール表現3

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スピノール表現

$-\gamma^{\mathrm{T}}_\mu$を$\gamma_\mu$に関連付けるために、行列$\mathcal{C}$を導入する。

\begin{equation}
\mathcal{C}\gamma_\mu\mathcal{C}^{-1}=-\gamma^{\mathrm{T}}_\mu\tag{27}
\end{equation}

但し、$\mathcal{C}$は次の式を満たすように与えられている。

\begin{equation}
\mathcal{C}\mathcal{C}^\dagger=\mathbbm{1} 、 \mathcal{C}=-\mathcal{C}^{\mathrm{T}}\tag{28}
\end{equation}

$\mathcal{C}$は荷電共役行列として知られている。(20)と(28)を用いると、次にのように$\gamma^*_\mu$も$\gamma_\mu$に関連付けることが出来る。

\begin{equation}
\gamma^*_\mu=-\mathcal{B}\mathcal{C}\gamma_\mu(\mathcal{B}\mathcal{C})^{-1}\tag{29}
\end{equation}

これらの相似変換を用いると、スピノールにおける射影条件を定義することが出来る。特に、Lorentz 代数の下でDirac スピノールは可約であることが分かる。さて、次のような2つの異なる射影条件を定義しよう。

 

  • Weyl スピノール

$\gamma_5^2=\mathbbm{1}$なので、$\gamma_5$の固有値は$\pm1$である。更に、$\gamma_5$はトレースレスであるので、2つの固有値$+1$と2つの固有値$-1$を持つ。今、$\gamma_5$が対角的になるように基底を採る前に、トレースレスになるように固有値を決定しているから、$\gamma_5$がトレースレスになるには、その4つの固有値は2つが$+1$、残り2つが$-1$になるしかない。$\gamma_5$が対角的になるように基底を採ろう。我々は$\mathcal{J}^{\mu\nu}$と$\gamma_5$が交換するということを知っている。$\mathcal{J}^{\mu\nu}$は2つの$2\times2$ブロックでブロック対角的であるから、従って、可約である。実際、Dirac スピノール$\Psi$を、次の式で定義されるような2成分の右巻きWeyl スピノールと左巻きWeyl スピノールに射影する。

\begin{equation}
\Psi_{\mathrm{L}}=\left(
\begin{array}{c}
\psi_{\mathrm{L}}
0
\end{array}
\right)=\mathcal{P}_+\Psi

\Psi_{\mathrm{R}}=\left(
\begin{array}{c}
0
\psi_{\mathrm{R}}
\end{array}
\right)=\mathcal{P}_-\Psi

\mathcal{P}_{\pm}=\dfrac{1}{2}(\mathbbm{1}\pm\gamma_5)
\tag{30}
\end{equation}

注意として、$\mathbf{2}_{\mathbf{L}}$と$\mathbf{2}_{\mathbf{R}}$で書かれるWeyl 表現は等しくない。複素共役の下で$\mathbf{2}_{\mathbf{L}}$と$\mathbf{2}_{\mathbf{R}}$は互いに写り合う。

  • Majorana スピノール

$\gamma_\mu^*$と$\gamma_\mu$は$\mathcal{B}\mathcal{C}$に関連づけられているので、$\mathcal{J}^{\mu\nu}$と$(\mathcal{J}^{\mu\nu})^*$は次のように$\mathcal{B}\mathcal{C}$を用いて書くことが出来る。

\begin{equation}
\mathcal{B}\mathcal{C}\mathcal{J}^{\mu\nu}(\mathcal{B}\mathcal{C})^{-1}=-(\mathcal{J}^{\mu\nu})^*\tag{31}
\end{equation}

従って、複素共役を取ったDirac スピノール$\Psi^*$はLorentz 変換の下で同じように変換するので、Lorentz 共変性と矛盾することなく次のような実条件を課すことが出来る。スピン0の粒子をあらわすKlein-Gordon 場の場合、実場は粒子と反粒子が同一の粒子に対応し、複素場は粒子と反粒子が異なる粒子に対応していた。複素場に実条件$\varphi^*=\varphi$を課すと実場が得られるのだった。

一方で、スピン$1/2$の粒子の場合、Dirac 場は粒子と反粒子が異なるスピン$1/2$の粒子をあらわす場であり、Majorana 場は粒子と反粒子が異なるスピン$1/2$の粒子をあらわす場である。粒子と反粒子が同一のスピン$1/2$の場を定義するには$\Psi^*=\Psi$を課せば良いように見えるが、この2つはLorentz 変換の下での変換性が異なるので、この式は相対性原理を満たせない。故に上記のような条件を採らなければならない。因みに、(32)と$(\mathcal{B}\mathcal{C})^*\mathcal{B}\mathcal{C}=\mathbbm{1}$を、あるいは(32)と($(\mathcal{B}\mathcal{C})^*\mathcal{B}\mathcal{C}=\mathbbm{1}$と同値な)荷電共役の定義$\Psi^{\mathrm{c}}=(\mathcal{BC})^*\Psi^*$をMajorana 条件と呼ぶ。

\begin{equation}
\Psi^*=\mathcal{B}\mathcal{C}\Psi\tag{32}
\end{equation}

この射影条件は2次元の表現としても定義することが出来て、Majorana スピノールと呼ばれる。$\Psi^{**}=\Psi$であるから、演算子$\mathcal{B}\mathcal{C}$は$(\mathcal{B}\mathcal{C})^*\mathcal{B}\mathcal{C}=\mathbbm{1}$を満たさなければならない。

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