大学に入学した理工系の学生が1年生で必ず初めに勉強するのが古典力学という学問です。
電気系であれば電気回路について勉強することもあるでしょう。
そのときに必ず登場するのが、微分方程式(特に常微分方程式)です。
しかし、常微分方程式は自分の手で計算を進めなければ中々きちんとした理解に到達することができません。
また、その計算も、多くは高校から学部1年までで習った微分積分の計算がメインになるため、そこまでの基礎がしっかりと定着している必要があります。
なので、参考書を探すときはなるべく解説がきちんと書かれていて、テーマをしっかり網羅しているものが欲しいですよね。
そこで、今回は常微分方程式の基礎をマスターするための分かりやすい参考書を紹介していきたいと思います!
ここでは皆さんが図書館や書店で簡単に手に取れる本をピックアップするため、和書に限定して紹介していきたいと思います。
常微分方程式を勉強する前に
常微分方程式は力学や電気回路、化学反応などで登場する微分方程式で、物理、化学、工学と分野を問わず頻出です。
常微分方程式の分野は関連した定理の証明を問われることはほとんどなく、
- 常微分方程式の一般解を求める
- その一般解を利用して、与えられた初期条件に適する特殊解を求める
の2パターンの問題が90%以上を占めます。
一般解さえ求めることができれば、後者は簡単な方程式を解くだけの場合がほとんどですので、一般解を求める計算に慣れておくことが最重要事項です。
それぞれの常微分方程式の形に対して、「この形の場合はこのように式変形をする」というパターンがありますので、良く出題されるパターンを中心に演習を重ねていきましょう!
常微分方程式の基礎を理解したい人への6冊
常微分方程式をサクッとマスターするならコレ!
馬場敬之、『常微分方程式』、マセマ、2010
【難易度:★☆☆☆☆ ボリューム:★☆☆☆☆ 網羅性:★★☆☆☆】
単位取得が危ういのでとにかく計算をサクッとマスターしたいという人にはこの本がオススメです。
発展的な問題は扱っていませんが、基礎的な話題を例題を交えて分かりやすく解説しています。
なお、マセマのシリーズはそれぞれの分野をマスターするために最低限必要な知識が分かりやすくまとめられているので、新しい分野を勉強する時の1冊にオススメです。
後半のべき級数解法のところは、前半部分に比べると、院試ではあまり出題されません。
これらは物理や化学をやっていて特殊関数が出てきたときに適宜読めばよいと思います。
常微分方程式の基本を理解したいアナタにオススメ!
石村園子、『やさしく学べる微分方程式』、共立出版、2003
【難易度:★☆☆☆☆ ボリューム:★★☆☆☆ 網羅性:★★☆☆☆】
常微分方程式をやさしい説明で理解したい人には、前述のマセマのほかにこの本もあります。
小学校の頃の計算ドリルのように一歩一歩確認しながら進めることができるので、丁寧な解説を求めている人におすすめです。
著名な数学者による、超入門の教科書!
矢野健太郎、石原繁、『基礎解析学コース 微分方程式』、1994、裳華房
【難易度:★☆☆☆☆ ボリューム:★☆☆☆☆ 網羅性:★★☆☆☆】
物理数学の入門コースとしては、この矢野先生たちの本もおすすめです。
矢野先生は数学者でありながら、非数学科の方たちのレベルに合わせて分かりやすい説明をした本をたくさん書かれています。
このシリーズにはベクトル解析などもあるので、そちらの分野の参考書を探している人はこのシリーズをぜひチェックしてみてください!
可積分系や群論の名著を著した著者による常微分方程式の教科書!
井ノ口順一、『常微分方程式』、日本評論社、2015
【難易度:★★★☆☆ ボリューム:★★☆☆☆ 網羅性:★★☆☆☆】
数学寄りの方が書いた入門書としては、こちらの本もおすすめです。
この本は他の本よりも、「何故このような式変形をするのか」をしっかりと説明してくれているという特徴があります。
そのため、「何かよく分からないけど答えは出せた」という微妙な理解にならず、しっかりと理解することができます。
ちなみに、井ノ口先生はリー群や可積分系などの有名な教科書も書かれています。
将来これらの発展的な分野を勉強する人は、この井ノ口先生が書かれた他の本をチェックしてみてください。
最近復刊された、コンパクトな教科書!
竹之内脩、『常微分方程式』、ちくま学芸文庫、2020
【難易度:★★☆☆☆ ボリューム:★★☆☆☆ 網羅性:★★★☆☆】
この本は数十年前に書かれた本を文庫で復刊したものになっています。
文庫本であることから、このページで紹介した他の本よりも安価なものになっていますので、手ごろな教科書を探している人にもおすすめです。
最近刊行された東京大学工学教程の一冊!
佐々成正、井上 純一 、『基礎系 数学 常微分方程式』、丸善出版、2020
【難易度:★★★★☆ ボリューム:★★★☆☆ 網羅性:★★★☆☆】
非数学科の理工系向けの本の中でやや発展的な本としては、この東京大学工学教程の本があげられます。
東京大学工学教程の本はどれも基本的なトピックから始まって発展的な内容まで扱っているので、基礎から発展までを1冊でおさえたいという人にピッタリです。
常微分方程式の問題演習をしたい人への2冊
サクッと常微分方程式の問題演習をしたいアナタにオススメ!
馬場敬之・高杉豊、『演習 常微分方程式』、マセマ、2019
【難易度:★☆☆☆☆ ボリューム:★★☆☆☆ 網羅性:★★★☆☆】
常微分方程式の問題演習をサクッとこなしたい人にオススメなのがこの本です。
他のマセマシリーズ同様大変分かりやすいです。
先ほどのマセマの本と同等、後半のべき級数解法のところは、前半部分に比べると、院試ではあまり出題されません。
これらは物理や化学をやっていて特殊関数が出てきたときに適宜読めばよいと思います。
物理数学の出題パターンを網羅した名著!
寺田文行 他、『演習微分方程式』、サイエンス社、2010
【難易度:★★★☆☆ ボリューム:★★★★★ 網羅性:★★★★☆】
大学院入試や定期テストに向けてとにかく問題演習がしたいんだ!という人にはこちらの本をおススメします。
院試で出題される問題パターンはこれでほぼ尽きていると思います。
私は数検1級の対策にも利用しました。解説もとても丁寧で、学生への配慮が随所に散りばめられています。
1ページあたりに収録されている問題数が多いので見た目よりもかなりボリュームがあると思ってください。
常微分方程式の問題演習をネットでしたい人のために!
ここまで読んでいただいた人の中には、「おすすめの参考書はわかったけれど、具体的にどういう問題が大学院入試・定期テストでよく出るの?」という疑問を持った人もいるかもしれません。
そんな人たちのために、てふてふ勉強法では、常微分方程式の問題演習を解説した記事を書いています!
ここでは、非数学科の理工系の大学院入試で良く出題される計算問題にテーマを絞って解説を行っています。
以下のリンクから確認できるので、もっと演習問題を解いてみたいという人はぜひチェックしてみてください!
【大学院入試対策】常微分方程式演習1
まとめ
さて、いかがだったでしょうか?
少しでもこの記事が皆さんの参考になることを願って筆をおきたいと思います。