$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
$\def\kb{k_{\text{B}}}$
$\def\dag{\dagger}$
弦理論入門10
閉じた超弦
閉じた超弦のセクターは$4$つの異なる方法で構成される。右に動くと左に動く弦はそれぞれ開弦のNS セクターとR セクターに似ている。時空の点の見方から、先の状態に関するNS-NS セクターとR-R セクターが時空のBoson となり、これに対して、NS-R セクターとR-NS セクターが時空のFermion となる。
閉弦では、表で与えた開弦の状態を$2$つ複製することによって最低状態を得る。閉弦の最低状態は表に与えてある。但し、$+$と$-$はここでもFermion的な数$\exp{(i\pi F)}$に対応している。表の表現には次のような性質がある。$\mathbf{28}$、$\mathbf{56_t}$、$\mathbf{35}_\pm$にはそれぞれ$2$形式、$3$形式、$4$形式を表現している。但し、$4$形式は自己双対条件を満たしている。$\mathbf{35}$は$2$階の対称トレースレステンソルである。$\mathbf{56}$、$\mathbf{56}’$はベクトルスピノールであり、グラビティ―ノに対応している。
| セクター | $SO(8)$表現 | $M^2$ |
| $(\mathrm{NS}+,\mathrm{NS}+)$ | $\mathbf{8^{~~}_v}\otimes\mathbf{8^{~~}_v}=\mathbf{1}\oplus\mathbf{28}\oplus\mathbf{35}$ | $0$ |
| $(\mathrm{NS}-,\mathrm{NS}-)$ | $\mathbf{1}$ | $-1/2\alpha’$ |
| $(\mathrm{R}+,\mathrm{R}+)$ | $\mathbf{8}_{~~}\otimes\mathbf{8}_{~~}=\mathbf{1}\oplus\mathbf{28}\oplus\mathbf{35}_+$ | $0$ |
| $(\mathrm{R}-,\mathrm{R}-)$ | $\mathbf{8}_{~~}’\otimes\mathbf{8}_{~~}’=\mathbf{1}\oplus\mathbf{28}\oplus\mathbf{35}_-$ | $0$ |
| $(\mathrm{R}+,\mathrm{R}-)$ | $\mathbf{8}^{~~}\otimes\mathbf{8}_{~~}’=\mathbf{8^{~~}_v}\oplus\mathbf{56_t}$ | $0$ |
| $(\mathrm{NS}+,\mathrm{R}+)$ | $\mathbf{8^{~~}_v}\otimes\mathbf{8}^{~~}=\mathbf{8}_{~~}’\oplus\mathbf{56}$ | $0$ |
| $(\mathrm{NS}+,\mathrm{R}-)$ | $\mathbf{8^{~~}_v}\otimes\mathbf{8}_{~~}’=\mathbf{8}_{~~}\oplus\mathbf{56}’$ | $0$ |
超対称性のある閉弦の最低状態
GSO 射影は$4$つのコンシステントな$10$次元の閉弦の理論を生じる。この後見ていくように、ゲージ・重力双対では、そのうちの$2$つ、IIA 型超弦理論とIIB 型超弦理論に特に興味がある。これらは次のセクターを有している。
\[
\left\{
\begin{array}{lllll}
\mathrm{Type~IIA}:&(\mathrm{NS}+,\mathrm{NS}+),&(\mathrm{R}+,\mathrm{NS}+),&(\mathrm{NS}+,\mathrm{R}-),&(\mathrm{R}+,\mathrm{R}-)\\
&&&&\\
\mathrm{Type~IIB}:&(\mathrm{NS}+,\mathrm{NS}+),&(\mathrm{R}+,\mathrm{NS}+),&(\mathrm{NS}+,\mathrm{R}+),&(\mathrm{R}+,\mathrm{R}+)
\end{array}
\right.
\]
IIB 型理論はいつでもFermion 的な数が$+1$となるので、カイラルな構造を持つ。表の結果を用いることで、これを表現に対応させることが出来て、
\begin{align}
\mathrm{Type~IIA}:&\mathbf{1}\oplus\mathbf{8_v}\oplus\mathbf{28}\oplus\mathbf{56_t}\oplus\mathbf{35}\oplus\mathbf{8}\oplus\mathbf{8}’\oplus\mathbf{56}\oplus\mathbf{56}’\\
&\nonumber\\
\mathrm{Type~IIB}:&\mathbf{1}^2\oplus\mathbf{28}^2\oplus\mathbf{35}\oplus\mathbf{35}_+\oplus\mathbf{8}’^2\oplus\mathbf{56}^2
\end{align}
となる。IIA 型理論はカイラリティが異なるスピノール$\mathbf{8}$、$\mathbf{8}’$とスピノール$\mathbf{56}$、$\mathbf{56}’$を有している。他方で、IIB 型理論は先に述べたようにカイラルな理論である。$\mathbf{56}$、$\mathbf{56}’$は$\mathbf{35}$表現に対応しているグラビトンの超パートナーであるグラビティ―ノに対応している。
NS-NS セクターは場$\phi$、$B_{MN}$、$g_{MN}$を有している。これらは$SO(8)$の$\mathbf{1}$、$\mathbf{28}$、$\mathbf{35}$に対応している。これらの場はBoson 的弦理論を論じた際にお目にかかっている。他方で、NS-R セクターやR-NS セクターなどの混合セクターには超パートナーであるグラビティーノやディラティーノなどが含まれている。R-R セクターは基底状態の縮退によってより複雑になっている。カイラリティが異なることにより、$2$つの同等でないR-R 基底状態が存在し、これらはIIA 型超弦理論とIIB 型超弦理論に対応している。IIB 型理論には左に動くセクターと右に動くセクターは同じカイラリティを有しており、零質量の準位にはスカラー場$C_{(0)}$、$2$階反対称テンソル場$C_{(2)}$、$4$階反対称テンソル場$C_{(4)}$が住んでいる。$2$つのカイラリティが逆のR-R 状態のIIA 型理論には反対称テンソル場$C_{(1)}$、$C_{(3)}$が住んでいる。
1980年代から1990年代に発見されたように、超弦理論には更にI 型理論とゲージ群$SO(32)$及び$E_8\times E_8$の下でのヘテロティック弦理論、すなわち、$SO(32)$ヘテロ型理論と$E_8\times E_8$ヘテロ型理論として知られる合計$3$つのコンシステントな理論が存在している。これらはお互いに、そしてII 型理論と双対性のウェブによって繋げられる。しかし、ここでの目的においては、II 型理論のみに注目するだけで充分である。






