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【物理学実験】物理学実験3-放射線の検出と計測1

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$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
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$\def\dag{\dagger}$

物理学実験3

放射線の検出と計測を議論しましょう。半径$R$の粒子では断面積$\sigma=\pi R^2$が衝突の際には有効となります。ルミノシティ(単位時間当たりの粒子数)から断面積を計算させられる場合もありますが、その場合は次元解析で良いことが多いです。

物質と荷電粒子の相互作用

まずはバルク物質を通り抜ける核と電子がどのように相互作用するのかを知っておこう。ここでの原子核とは陽子・アルファ線(${}^4\text{He}$ 原子核)・核分裂の副産物である重原子核などである。ほとんどの元素の核子あたりのおおよその結合エネルギー(数MeV)未満の運動エネルギーでは、電子と原子核の両方が電磁気力によって物質と非常に強く相互作用する。

原子の電子と相互作用が起こると、電子はより高いエネルギー状態へ励起するか、原子を飛び出して原子がイオン化される。これらによって入射粒子のエネルギーは減少する。

相互作用の種類が違うため、電子の質量と原子核の質量のオーダーは異なる。

 

  • 核は電子よりも早く止まる
    アルファ粒子の平均経路長は$10^{-5}~\text{m}$であるのに対し、高エネルギーの電子は$10^{-3}~\text{m}$である。これは電子よりも原子核の方が単位長さ当たりのエネルギー損失$\rmd E/\rmd x$が大きいとも言える。

 

  • 核は専ら電子と相互作用する
    重粒子と核の相互作用は稀であり、通常は無視して良い。しかし、ラザフォードの実験から分かるように、やろうと思えば測定できる効果であるということは覚えておいた方が良い。

 

  • 核はまっすぐに進む
    ボウリングの球と沢山のピンポン玉が衝突する場合と同様、核はまっすぐ進み、電子は広範囲の角度へ跳躍する。

 

  • 核は衝突によってエネルギーを失う
    核のエネルギー損失は、放射線を放射することよりも電子との衝突をすることに原因がある。入射する核の質量は相互作用する電子の質量よりも非常に大きいので、核は各衝突で少しずつエネルギーを失う。これに対して電子は衝突で多くのエネルギーを失うことになる。

 

  • 電子は制動放射でもエネルギーを失う
    重粒子とは違って、電子は制動放射によるエネルギー損失も経験する。これは電場の存在が原因であり、これにより電子は高エネルギーの光子(通常はX 線領域)を放出するので、電子は多くのエネルギーを失う。この現象は衝突によるエネルギー損失よりも稀だが、制動放射を引き起こす電磁相互作用は核電荷に比例するため、原子番号の高い材料でより頻繁に発生する。

通常、核と電子のエネルギー損失の比は内部エネルギーに依存するが、相対論的な速度では全ての粒子がほぼエネルギーを失う。空気中で単位距離を移動するごとに失うエネルギーはおおよそ$1~\text{keV/cm}$である。この値は重い粒子と軽い粒子両方に対するエネルギー損失曲線の最小値に対応しており、相対論的粒子は媒体内の単位距離あたりのエネルギーの最小量を蓄積するため、最小イオン化粒子と呼ばれる。

ちなみに、光子は中性であり相互作用も他の荷電粒子と異なるので最小イオン化粒子にはなり得ない。

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