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【物理学実験】物理学実験5-放射線の検出と計測3

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物理学実験5

レーザーの基本原理

ここではレーザーの基本的な原理を述べる。レーザーを考えるためには、基底状態と励起状態を持った、少なくとも$2$準位の量子力学的な系が必要である。物質は自由な原子、有機分子、あるいは任意の数のエキゾチック物質からなると考えてよい。

外的な電源(光学ポンプ)を用いて、物質の半分以上を励起状態にする。このような操作は例えば、電気の火花などによって可能である。物質の大部分が励起状態になるとき、反転分布が達成されたと言う。このとき、励起状態は自然放出によって基底状態に落ちる傾向がある。励起状態の光子が基底状態にいる粒子に吸収されてしまうとその粒子が励起状態になるだけで最終的に変化が起こらないが、時間に依存する摂動論の教えるところに依れば、光子は他の励起状態に吸収されることもあって、この状態では$2$つの光子が刺激されて基底状態に落ちる。この光子のプロセスを誘導放出と呼ぶ。このプロセスは連鎖反応を引き起こして同じ振動数と位相を持った大量の光子が生成される。これがレーザーの原理である。

しかし、統計力学によると2準位系では反転分布を達成できないことが分かる。そのため実際には準安定な状態を有した3準位レーザーや$4$準位レーザーなどが用いられる。

 

 

レーザーの種類

  • 固体レーザー(Nd:YAG)
    レーザーの媒質は結晶またはガラスで、原子のエネルギー準位間で遷移がある。Nd:YAG レーザーでは、結晶は$\mathrm{Y}_2\mathrm{Al}_5\mathrm{O}_{12}$(イットリウム・アルミニウム・ガーネット、YAG)であり、いくつかのイットリウムイオンはネオジムに置き換わっている。ネオジム原子の準位はYAG 結晶の電場で分裂し、$4$準位系となっている。
  • 衝突ガスレーザー(He-Ne)
    レーザーの媒質は単一気体もしくは混合気体で、原子の衝突によって遷移が起こる。すなわち、あるガスの励起電子が他のガス分子中の電子にエネルギーを輸送する。He-Ne ガスレーザーには沢山の準位が存在しているが、通常の電気力学で伝導空洞を使用して特定の電磁モードを励起するようにレーザーを共振空洞に配置することで特定の波長を選択できる。
  • 分子ガスレーザー($\mathrm{CO}_2$)
    レーザーの媒質は気体で、遷移は振動のエネルギー準位によるものである。安価かつ広く利用可能なことから二酸化炭素が良く用いられる。
  • 色素レーザー
    レーザーの媒質は液体で、通常は水またはアルコール中に溶解した有機色素である。遷移は色素に特徴的な色を与える炭素原子の鎖に沿った電子の移動特性に関連している。興味深いことに、レーザーは色素の通常の可視色に対応する波長で操作する傾向はないが、電子輸送の連鎖は非常に効率的であるため他の周波数でもレーザー操作が可能である。
  • 半導体(ダイオード)レーザー
    レーザーの媒質は半導体である。ポンピングプロセスは伝導帯を励起し、遷移は伝導帯の下部の電子と価電子帯の上部の正孔との間の電子正孔消滅である。これはレーザー光の基礎を形成する光子を生ずる。この現象はバンドギャップのオーダーの光子で起きる。紫外光は光子のエネルギーで言うと$3\sim100~\text{eV}$に対応している。これは水素原子での$n=2$から$n=1$への遷移エネルギーが
    \begin{equation}
    \left(1-\dfrac{1}{2^2}\right)\times13.6~\text{eV}=10.2~\text{eV}
    \end{equation}
    となるということに由来している。これは2014年のノーベル物理学賞にも関連している。
  • 自由電子レーザー
    レーザーの媒質は原子や分子に束縛されていない電子の集団である。外部電場で前後に加速するような力を受けると、電子は発振周波数に応じた周波数で制動放射を行う。離散的なエネルギー準位がないためこれをレーザーと呼ぶのは少し無理やりだが、半古典的な解析では増幅があることが示されている。

干渉計

 

干渉計とは光の波動的な性質を利用して距離や速度を正確に測る装置である。最も有名な干渉計はマイケルソン・モーレーの干渉計である。

光源S からやってきた単色光がハーフミラーH に入射して、半分ずつA とB に向かって反射・透過する。これらの光はA とB で反射した後、光検出器D に入る。$2$つの光の光路長が異なる場合、$2$つの光は干渉を起こす。このとき、二重スリットの式$d\sin{\theta}=m\lambda$が適用できる。

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