トイモデル
前回のトイモデルの議論の続きを話していく。まず超対称性代数を導こう。このためには(161)の2つの微小超対称性変換ϵ、ηを考える。スカラー場ϕに関しては
[δϵ,δη]ϕ=2i(ησμˉϵ−ϵσμˉη)∂μϕ
を得る。これに対してWeyl フェルミオンψに関しては
[δϵ,δη]ψ=2i(ησμˉϵ−ϵσμˉη)∂μψ−2i(ˉϵˉσμ∂μψ)η+2i(ˉηˉσμ∂μψ)ϵ
を得る。
問題
関係式(163)と(164)を導け。
解答
前半部分は次のように容易に示すことが出来る。
[δϵ,δη]ϕ=δϵ√2ηψ−δη√2ϵψ=2i(ησμˉϵ−ϵσμˉη)∂μϕ
後半部分は、Fierz 恒等式χα(ξθ)=−ξα(θχ)−θα(χξ)とスピノール関係式ξ†ˉσμχ=−χσμξ†を利用すれば、
[δϵ,δη]ψ=2i(σμˉηϵ−σμˉϵη)∂μψFierz恒等式=2i{−ϵ(∂μψ)σμˉη+η(∂μψ)σμˉϵ−(∂μψ)σμˉηϵ+(∂μψ)σμˉϵη}スピノール関係式=2i(ησμˉϵ−ϵσμˉη)∂μψ−2i(ˉϵˉσμ∂μψ)η+2i(ˉηˉσμ∂μψ)ϵ
を得る。
運動方程式はˉσμ∂μψ=0を暗示しているから、以下のように結論付けることが出来る。
[δϵ,δη]=2i(ησμˉϵ−ϵσμˉη)∂μ
すなわち、いかなる場に適用された交換子もベクトルησμˉϵの平行移動に過ぎない。この結論を導くためには運動方程式が必要であるから、この代数はオンシェルにおいてのみ閉じているということに注意すべきである。
これまで我々はBoson とFermion の、相互作用と質量がない理論を考えてきた。次なる一歩として、相互作用を加えてみよう。相互作用が存在することで、運動方程式は非線型になる。これまで見てきたように、運動方程式の一部は2つの超対称性変換の交換子から生じるので、相互作用のある理論において一般に非線型になる。しかしながら、追加の非力学的な複素スカラー場Fを導入することによって、それらの場が線型に保たれる。この場は、積分可能なLagrange の未定乗数とみなすことが出来る。すなわち、その非力学的な運動方程式を用いることで消去することが出来る。従って、補助場を導入したとしても理論は依然として2つのBoson 的自由度と2つのFermion 的自由度をシェル上に有することになる。
Lagrangian の自由な部分は
Lkin=−∂μϕ∗∂μϕ−iˉψˉσμ∂μψ+F∗F
であり、次のような項を加えることが出来る。
Lmass=m(−12ψψ+ˉψˉψ+Fϕ+F∗ϕ∗)
この項は、もしFが積分すればFermion の質量mを生成することが出来て、それは同様にスカラー場ϕの質量にもなる。更に、次のような相互作用項を考えることも出来る。
Lint=g(ϕ2F+ϕ∗2F∗−ψψϕ−ˉψˉψϕ)
合計のLagrangian L=Lkin+Lmass+Lintは以下の超対称性変換の下で不変である。
δϵϕ=√2ϵψ 、 δϵψα=+√2ϵαF+√2i(σμˉϵα)∂μϕ 、 δϵF=√2iˉϵˉσμ∂μψ
Lagrangian (166)、(167)、及び(168)において補助場Fは微分項なしに現れる。従って、Fは非力学的であり、Fを積分する運動方程式を用いて消去することが出来ると分かるのである。上で与えたFを用いると、運動方程式は
F∗=−mϕ−gϕ2
となるから、オンシェルのときのLagrangian は
Lon−shell=−∂μϕ∗∂μϕ−iˉψˉσμ∂μψ−12mψψ−12mˉψˉψ−gϕψψ−g∗ϕ∗ˉψˉψ
となる。特にオンシェルの理論における超対称性変換は場に対して非線型で、
δϵϕ=√2ϵψ 、 δϵψ=√2i(σμˉϵ)∂μϕ−√2(mϕ∗+gϕ∗2)ϵ
となることに注意せよ。この小節での結論は、N=1超対称性カイラル多重項の場を含むような、相互作用のある場の理論が存在するということを主張している。これをWess-Zumino モデルという。我々はFを手で加えることで超対称性理論を構築したから、当然、超対称性変換の下で不変であることが保証されているような超対称な理論をよりエレガントに定式化する方法は無いのかという疑問が生じることになる。これは次の小節で論じるN=1超空間定式化によって解決することになる。