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古典力学はどういう学問か
古典力学は17世紀以前の天文学から派生して創られた,物体の運動を記述する学問です.古典力学は大まかに発展の時期で2分割され,ケプラーらの観測を元にニュートンが創り上げた理論をニュートン力学,そしてニュートン力学をオイラー,ラグランジュ,ハミルトンらが数学的に洗練して再構成した理論を解析力学と言います.以下では,これら2つをまとめて指すときに古典力学という言葉を用いることにします.
何故,ニュートン力学なのか?
大学に入学した物理学科の学生が1年生で必ず初めに勉強するのが古典力学という学問です.古典力学は2年次以降に勉強する全ての物理学の基礎になっていると言っても過言ではありません.近似の考え方や物理数学の方法など現代物理学を学ぶためのエッセンスが古典力学には凝縮されているのです.
しかし,大学で勉強する「数学的手法を積極的に使い,実験に基づいて発展していく物理」は,高校で勉強した「公式を覚えて使う物理」とは大きく異なるため何となく勉強するだけでは講義について行けず単位を落としてしまうかもしれません.
古典力学の歴史
古典力学における重要な発展をまとめると以下のようになります.
- [1543年:]コペルニクスによる『天体の回転について』
- [1575年:]ティコ・ブラーエによる天体観測の開始
- [1583年:]ガリレイによる振り子の等時性の検証
- [1600年頃:]ガリレイによる物体の落下の法則の発表
- [1609年:]ケプラーによる『新天文学』
- [1619年:]ケプラーによる『世界の調和』
- [1678年:]フックによる弾性体に対するフックの法則の発表
- [1687年:]ガリレイによる『新科学対話』
- [1687年:]ニュートンによる『自然哲学の数学的原理』
- [1736年:]オイラーによる『力学もしくは解析学的に示された運動の科学』
- [1781年:]ハーシェルによる第7惑星(天王星)の発見
- [1788年:]ラグランジュによる『解析力学』
- [1799年:]ラプラスによる『天体力学』
- [1846年:]アダムス,ルヴァリエ,ギャレらによる第8惑星(海王星)の発見
- [1893年:]ポアンカレによる『常微分方程式』
- [1905年:]アインシュタインによる特殊相対性理論の提唱
- [1915年:]アインシュタインによる一般相対性理論の提唱
特に,古典力学1,そして続編の古典力学2ではニュートンによって『自然哲学の数学的原理』が著され,ニュートン力学が発展していくところを解説します.
この講座の目的と構成
この講座の目的は物理学における古典力学の考え方を理解することです.具体的には,ニュートン力学の質点の運動について理解を深めることが目標です.講座は以下の構成になっています.この講座では数学III を一通り勉強し終えた高校生でも読めるように,高校数学より上の数学の知識は全て数学的準備という場を設けて解説していますので,意欲的な高校生もぜひ通読してみてください!
- [第01講:古典力学の入り口]
- [第02講:1次元空間内の運動学]
- [第03講:数学的準備1:ベクトルの内積と外積]
- [第04講:2,3次元空間内の運動学]
- [第05講:古典力学の基本法則]
- [第06講:数学的準備2:テイラー展開,偏微分,線積分,周積分]
- [第07講:古典力学における保存則]
- [第08講:数学的準備3:常微分方程式]
- [第09講:外力による加速と減速]
- [第10講:単振動と減衰振動]
- [第11講:強制振動]
- [第12講:共鳴振動]
- [第13講:ケプラー問題1]
- [第14講:ケプラー問題2]
- [第15講:非慣性系からみた運動]
参考文献
参考文献は以下の通りです.
- [1]兵頭俊夫,『考える力学』,学術図書出版社,2001
- [2]篠本滋,坂口英継,『力学』,東京図書,2014
- [3]御領潤,『力学』,日本評論社,2017
- [4]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017