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【熱統計力学】統計力学2-古典統計力学

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$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$

古典統計力学

平方二乗平均速度(RMS 速度)、平均速度、最頻速度

気体分子運動論に依れば、$N$個の分子の内部エネルギーは、次のように与えられる。

\begin{equation}
U=\dfrac{3}{2}Nk_B T
\end{equation}

この分子の$1$個あたりの質量が$m$だとして、分子の運動エネルギーがこの内部エネルギーと等しいとすると、

\begin{equation}
v_{\mathrm{rms}}=\sqrt{\dfrac{3k_B T}{m}}
\end{equation}

を得る。これを分子の平方二乗平均速度(root-mean-square speed, RMS 速度)と呼ぶ。分子のRMS 速度は驚くほど速く、例えば室温における水素分子のRMS 速度は$1920$~m/s である。これは弾丸の速さよりも速い。

RMS 速度は気体分子の速さについて大まかなイメージを与えてくれるが、RMS 速度よりも速い分子はどれくらい存在しているのかなどの疑問も浮かんでくる。Maxwell は気体分子の速度分布を見出す問題を初めて解いた。彼はMaxwell の速度分布と呼ばれる確率分布、

\begin{equation}
P(v)=4\pi\left(\dfrac{m}{2\pi k_B T}\right)^\frac{3}{2}v^2\exp{\left(-\dfrac{mv^2}{2k_B T}\right)}
\end{equation}

を見出した。ここで$v$は分子の速さ、$m$は気体の質量、$k_B$はBoltzmann 定数、$T$は気体の温度である。この分布関数は$\int_0^\infty\rmd vP(v)=1$となるように規格化されている。気体分子の平均速度$v_{\mathrm{avg}}$は、

\begin{equation}
v_{\mathrm{avg}}=\int_0^\infty vP(v)\rmd v=\sqrt{\dfrac{8k_B T}{\pi m}}
\end{equation}

と得られる。同様に、速さの二乗平均$(v^2)_{\mathrm{avg}}$は、

\begin{equation}
(v^2)_{\mathrm{avg}}=\int_0^\infty v^2P(v)\rmd v=\dfrac{3 k_B T}{m}
\end{equation}

と得られる。これはRMS 速度$v_{\mathrm{rms}}$の二乗に等しい。最頻速度$v_{\mathrm{P}}$、すなわち、$P(v)$が最大となる速さは、

\begin{equation}
\dfrac{\rmd P(v)}{\rmd v}=0~\Longleftrightarrow~v_{\mathrm{P}}=\sqrt{\dfrac{2k_B T}{m}}
\end{equation}

と得られる。

気体中の音速

波動論の章でも触れた通り、気体中の音速$v_{\mathrm{Sound}}$は、以下の式で与えられる。
\[
v_{\mathrm{Sound}}=\sqrt{\dfrac{K}{\rho}}
\]
ここで、$K$は体積弾性率と呼ばれる量であり、理想気体においては一般に$K=\gamma P$が成り立つ。よって、

\begin{equation}
v_{\mathrm{Sound}}=\sqrt{\dfrac{\gamma P}{\rho}}=\sqrt{\dfrac{\gamma PV}{Nm}}=\sqrt{\dfrac{\gamma k_B T}{m}}
\end{equation}

が得られる。室温($15~\mathrm{C}^\circ$)での音速はおよそ$340$[m/s] であることが知られている。実際、$\gamma=\frac{7}{5}$、$k_B=1.38\times10^{-23}$[J/K]、$T=288$[K]、$m=14\times2\times10^{-3}/(6.02\times10^{23})$[kg] を代入すれば、$v_{\mathrm{Sound}}\simeq346$[m/s] と得られる。酸素やアルゴンの効果も取り入れると$340$[m/s] に近付いていく。

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