λ関数
関数℘(u|2ω1, 2ω3)においてω1、ω3に
(ω1′, ω3′)=(abcd)(ω1, ω3)ad−bc=1
の変換を行ってもこの関数は不変である。ゆえに℘(ω1)=e1において(abcd)の変換を行ったとすれば、
a≡1, b≡0(mod2)
のときに限り、e1は不変である。同様の理論で、e2、e3はそれぞれ
a+c≡1, b+d≡1(mod2)及びc≡0, d≡1(mod2)のときに限り不変である。(abcd)をa、b、c、dを偶数・奇数によって分類すれば次の六つとなる。
(1001), (01−10), (11−10), (1101), (1011), (01−11)
但し、すべて2を法として考え、ad−bc=1であることに注意する。
ゆえにλ(τ)は一つの母数関数で、
m=6, G0=(1001)
である。λとJの間には次の関係がある。
J=427(λ2−λ+1)3λ2(λ−1)
ゆえにλはJの6次の代数関数である。この類の関数を母数関数と呼ぶのはこれに起因する。
次にλ(τ)の基本領域を求めてみよう。
母数群を作り出すもとになった2つの要素S、Tは
S=(1011), T=(01−10)
である。したがって
TS=(01−10)(1011)=(11−10)STS=(1011)(01−10)(1011)=(1101)S−1T=(10−11)(01−10)=(01−1−1)
すなわち1、S、T、TS、STS、S−1Tはちょうど相異なる六つの種類を代表する。
ゆえに、\lambda(\tau)の基本領域を作るならば、新しいD及びこれにS、T、TS、STS、S^{-1}T$を行って得られる区域を合わせればよい。
λ(τ)はEにおいてあらゆる値を一度ずつとる。
なぜならば、aを任意の一数とし、λ(τ)=aとなるτがあったとすれば、そのτに対しては
J(τ)=427(a2−a+1)3a2(a−1)2(=A とおく)
となるためである。J(τ)=Aとなるτは既に知られるようにD、S、T、⋯等の各区内に一つずつあり、したがってE内には全部で六つある。しかしそれらの点ですべてλ(τ)=aとなるのではないが、全体として
λ(τ)=a, 1−a, 11−a, 1a, aa−1, a−1a
の値を与えるのである。これによって一般にλ(τ)=aとなるτがE内に常にただ一つ存在することがわかる。
この証明は(1)の六つの値がすべて異なると仮定して導いたが、この中に等しいものがある場合は
a=0, 1, ∞; −1, 2, 12; 1±√3i2
の場合、したがってA=0, 1, ∞の場合に限る。これはJ(τ)の場合と同様に、特別に分けて議論する必要がある。
以上によってτ平面のEがλ平面の全部と一対一の対応をなすことがわかった、その対応をさらに詳しく調べてみよう。
まずτ平面の虚軸を考えると、その上では
q=eτπi=e−πy>0, (τ=x+yi)
すなわちqは正の実数である。したがって
λ(τ)=e2−e3e1−e3=(ϑ2ϑ3)4&=(2q14+2q94+⋯1+2q+⋯)4>0
すなわちλ(τ)もまた正の実数である。そして特に
y→∞⟹q→0, λ(τ)→0
またτ=iのときはe3=−e1, e2=0、したがって
λ(i)=e1e1+e1=12
これによってτ平面の虚軸中のiより上の部分はλ平面の(0, 12)の実軸の部分に対応することを知る。
iより上の虚軸にTを行えばiと0の間の虚軸を得る。そしてこれに対するλの変化は1−λである。したがってτの(0, i)の虚軸の部分はλの(1, 12)の実軸の部分に対応することがわかる。
これでτの虚軸の写像がわかったから、次にはこれにS−1を行ってみると、τのx=−1の直線がλの実軸の(0, −∞)の負の部分に対応することが判る。x=1についても同様である。
さらにx=1にTを行ってみれば、τの(−1, 0)を直径とする上半円周はλの(1, ∞)の実軸の部分に対応することがわかる。
参考文献
参考文献は以下の通り。
[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。
[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。
[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001
[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49 ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。
[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017