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第41講:λ関数

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λ関数

関数$\wp\left(u\left|2\omega_1,\ 2\omega_3\right.\right)$において$\omega_1$、$\omega_3$に

\[\left({\omega_1}^\prime,\ {\omega_3}^\prime\right)=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\left(\omega_1,\ \omega_3\right)\hspace{1cm}ad-bc=1\]

の変換を行ってもこの関数は不変である。ゆえに$\wp\left(\omega_1\right)=e_1$において$\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$の変換を行ったとすれば、

\[a\equiv1,\ \ b\equiv0\pmod{2}\]

のときに限り、$e_1$は不変である。同様の理論で、$e_2$、$e_3$はそれぞれ

$a+c\equiv1,\ \ b+d\equiv1\pmod{2}$及び$c\equiv0,\ \ d\equiv1\pmod{2}$のときに限り不変である。$\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$を$a$、$b$、$c$、$d$を偶数・奇数によって分類すれば次の六つとなる。

\[\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}1&1\\-1&0\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}1&0\\1&1\end{pmatrix},\ \begin{pmatrix}0&1\\-1&1\end{pmatrix}\]

但し、すべて$2$を法として考え、$ad-bc=1$であることに注意する。

ゆえに$\lambda(\tau)$は一つの母数関数で、

\[m=6,\ \ G_0=\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}\]

である。$\lambda$と$J$の間には次の関係がある。

\[J=\frac{4}{27}\frac{\left(\lambda^2-\lambda+1\right)^3}{\lambda^2\left(\lambda-1\right)}\]

ゆえに$\lambda$は$J$の6次の代数関数である。この類の関数を母数関数と呼ぶのはこれに起因する。

次に$\lambda(\tau)$の基本領域を求めてみよう。

母数群を作り出すもとになった2つの要素$S$、$T$は

\[S=\begin{pmatrix}1&0\\1&1\end{pmatrix},\ \ \ T=\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}\]

である。したがって

\begin{eqnarray*}TS&=&\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&0\\1&1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&1\\-1&0\end{pmatrix}\\STS&=&\begin{pmatrix}1&0\\1&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&0\\1&1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}\\S^{-1}T&=&\begin{pmatrix}1&0\\-1&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&1\\-1&-1\end{pmatrix}\end{eqnarray*}

すなわち$1$、$S$、$T$、$TS$、$STS$、$S^{-1}T$はちょうど相異なる六つの種類を代表する。

ゆえに、\lambda(\tau)$の基本領域を作るならば、新しい$D$及びこれに$S$、$T$、$TS$、$STS$、$S^{-1}T$を行って得られる区域を合わせればよい。

$\lambda(\tau)$は$E$においてあらゆる値を一度ずつとる。

なぜならば、$a$を任意の一数とし、$\lambda(\tau)=a$となる$\tau$があったとすれば、その$\tau$に対しては

\[J(\tau)=\frac{4}{27}\frac{\left(a^2-a+1\right)^3}{a^2\left(a-1\right)^2}\hspace{1cm}\left(=A\ \style{font-family:serif}{\text{とおく}}\right)\]

となるためである。$J(\tau)=A$となる$\tau$は既に知られるように$D$、$S$、$T$、$\cdots$等の各区内に一つずつあり、したがって$E$内には全部で六つある。しかしそれらの点ですべて$\lambda(\tau)=a$となるのではないが、全体として

\[\lambda(\tau)=a,\ \ 1-a,\ \ \frac{1}{1-a},\ \ \frac{1}{a},\ \ \frac{a}{a-1},\ \ \frac{a-1}{a}\tag{$1$}\label{1}\]

の値を与えるのである。これによって一般に$\lambda(\tau)=a$となる$\tau$が$E$内に常にただ一つ存在することがわかる。

この証明は$\eqref{1}$の六つの値がすべて異なると仮定して導いたが、この中に等しいものがある場合は

\[a=0,\ 1,\ \infty;\ -1,\ 2,\ \frac{1}{2};\ \frac{1\pm\sqrt{3}i}{2}\]

の場合、したがって$A=0,\ 1,\ \infty$の場合に限る。これは$J(\tau)$の場合と同様に、特別に分けて議論する必要がある。

以上によって$\tau$平面の$E$が$\lambda$平面の全部と一対一の対応をなすことがわかった、その対応をさらに詳しく調べてみよう。

まず$\tau$平面の虚軸を考えると、その上では

\[q=e^{\tau\pi i}=e^{-\pi y}\gt0,\ \ \left(\tau=x+yi\right)\]

すなわち$q$は正の実数である。したがって

\begin{eqnarray*}\lambda(\tau)=\frac{e_2-e_3}{e_1-e_3}&=&\left(\frac{\vartheta_2}{\vartheta_3}\right)^4\&=&\left(\frac{2q^\frac{1}{4}+2q^\frac{9}{4}+\cdots}{1+2q+\cdots}\right)^4\gt0\end{eqnarray*}

すなわち$\lambda(\tau)$もまた正の実数である。そして特に

\[y\rightarrow\infty \Longrightarrow q\rightarrow0,\ \ \lambda(\tau)\rightarrow0\]

また$\tau=i$のときは$e_3=-e_1,\ e_2=0$、したがって

\[\lambda(i)=\frac{e_1}{e_1+e_1}=\frac{1}{2}\]

これによって$\tau$平面の虚軸中の$i$より上の部分は$\lambda$平面の$\left(0,\ \dfrac{1}{2}\right)$の実軸の部分に対応することを知る。

$i$より上の虚軸に$T$を行えば$i$と$0$の間の虚軸を得る。そしてこれに対する$\lambda$の変化は$1-\lambda$である。したがって$\tau$の$\left(0,\ i\right)$の虚軸の部分は$\lambda$の$\left(1,\ \dfrac{1}{2}\right)$の実軸の部分に対応することがわかる。

これで$\tau$の虚軸の写像がわかったから、次にはこれに$S^{-1}$を行ってみると、$\tau$の$x=-1$の直線が$\lambda$の実軸の$\left(0,\ -\infty\right)$の負の部分に対応することが判る。$x=1$についても同様である。

さらに$x=1$に$T$を行ってみれば、$\tau$の$\left(-1,\ 0\right)$を直径とする上半円周は$\lambda$の$\left(1,\ \infty\right)$の実軸の部分に対応することがわかる。

参考文献

参考文献は以下の通り。

[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。

[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。

[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001

[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49  ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。

[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017

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