トイモデル
ここまでで我々はPoincare 代数を超対称性代数に拡張した。勿論、超対称性変換において不変であり、Noether 電荷が超対称性代数の下で発生するような場の理論が見つけられるのかという疑問が生ずるであろう。この小節では、最も簡単なモデルとして、成分がψαの左巻きフェルミオンと複素スカラー場ϕのN=1超対称性カイラル多重項に基づいた4次元の超対称性場の理論を考える。
簡単のため、質量と相互作用がない場合を考えよう。このときのLagrangian は、
L=∂μϕ∗∂μϕ−iˉψˉσμ∂μψ
となる。ここで、ψはWeyl フェルミオンであり、これに略記法ˉψ=ψ†を利用する。Lagrangian (160)は以下の超対称性変換の下で不変である。
δϵϕ=√2ϵψ 、 δϵψα=√2i(σμˉϵ)α∂μϕ
但し、ϵ(成分はϵα)は、超対称性変換でパラメトライズされた微小で反交換な2成分Weyl スピノールである。特に、ϵは時空の変数xμに依存していないから、(161)はLagrangian (160)の大域的対称性になっている。
問題
Lagrangian (160)は超対称性変換(161)の下で不変であることを示せ。(161)において時空依存性ϵ(x)を考えることで、関連する超電流を構成せよ。
解答
LScalar:=∂μϕ∗∂μϕ、LFermion:=−iˉψˉσμ∂μψとおく。
スカラーの項は、今、δϵϕ=√2ϵψ、δϵϕ∗=√2ˉϵˉψだから、
δLScalar=√2ϵ∂μψ∂μϕ∗+√2ˉϵ∂μϕ∂μˉψ
となる。一方で、Fermion の項は、今、δϵψ=√2iσμˉϵ∂μϕ、δϵˉψ=−√2iϵσμ∂μϕ∗だから、
δLFermion=−√2ϵσνˉσμ∂νϕ∗∂μψ+√2ˉϵˉψˉσμσν∂μ∂νϕ=−√2ϵσνˉσμ∂ν(ϕ∗∂μψ)+√2ϵσνˉσμϕ∗∂ν∂μψ+√2ˉϵˉψˉσμσν∂μ∂νϕ
となる。ここで、σμ、ˉσμの定義を思い出せば、
σνˉσμ=12{σνˉσμ+σμˉσν}−12[σνˉσμ−σμˉσν]=ηνμ−12[σνˉσμ−σμˉσν]
である。[⋯]の部分は、∂nu∂μ=∂μ∂νという対称性を考慮すれば0になるので、
√2ϵσνˉσμϕ∗∂ν∂μψ=√2ϵϕ∗∂2ψ=√2ϵ∂μ(ϕ∗∂μψ)−√2ϵ∂μϕ∗∂μψ
となる。同様にして、
√2ˉϵˉψˉσμσν∂μ∂νϕ=√2ˉϵ∂μ(ˉψ∂μϕ)−√2ˉϵ∂μˉψ∂μϕ
である。従って、δLFermionは、
δLFermion=−√2ϵ∂μϕ∗∂μψ−√2ˉϵ∂μˉψ∂μϕ+√2∂μ(ϵϕ∗∂μψ−ˉϵˉψ∂μϕ−ϵϕ∗∂μψ)
となる。従って、スカラーとFermion のLagrangian を合わせると、
δL=√2∂μ(ϵϕ∗∂μψ−ˉϵˉψ∂μϕ−ϵϕ∗∂μψ)
となる。よって、δS=∫d4xδL=0である。
問題
超対称性に関連したWeyl スピノールNoether 電荷Qを構成せよ。また、同時刻(反)交換関係を用いて以下の式が成り立つことを示せ。
iδϵϕ=[ϵQ+ˉϵˉQ,ϕ] 、 iδϵϕ=[ϵQ+ˉϵˉQ,ψ]