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【電磁気学】第03講 電磁気学とはどのような学問か?③

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第1回第2回に引き続き、電磁気学とはどのような学問なのかを確認しましょう。

電磁気学の場の定式化

電磁気学における基本的な問題は、たくさんの電荷(それらが動き回っている場合を考えることもある)があったときに、それらの電荷が他の電荷にどのような影響を与えるのかという問題を解くことである。

古典的な解は、場の理論(field theory)の形をとる。このことを我々は、電荷の周りの空間が電場と磁場に浸透している、あるいは、電荷の周りの空間に電場と磁場が住んでいると形容する。

電磁場はまるで電荷の香りのようだ、ということである。これらの場の周りに存在している第2の電荷はこれらの場を感じることで力を感じる。
そして、その影響が更に他の電荷へ影響を与える、という風にして相互作用を取り次いでいく。

電荷が加速されると、電場の一部がある意味で切り離されて、それと共にエネルギー、運動量、及び角運動量を運んで光速で移動する。

我々はこれを電磁放射(electromagnetic radiation)と呼ぶ。

兎に角、電磁放射は、場が原子や野球のボールのようにそれ自身で独立した動的実体として確かにあるらしいということを示唆しているのである。これにより、我々は電荷間の力の学ぶことよりも、むしろ場そのものの理論を学ぶことに対して興味が湧いてくる。

しかし、電磁場を生成するには電荷が必要であり、その電磁場を検出するには別の電荷が必要なのであるから、まずは電荷の本質的な特性を検討することから始めることにしよう。

電荷

電荷は2つの種類からなる

電荷はプラスとマイナスの2種類からなる。これらは互いに打ち消し合うような傾向がある。

同じ点に+qの電荷とqの電荷がある場合は電気的には何も電荷がない場合と同じ状態である。これは一見明白なことに思うかもしれないが、別の可能性も併せて考えてみてほしい。

もし8種類または10種類の異なる電荷があったらどうなるだろうか?

実際、色力学では電荷と同じようにみなすことが出来る異なる量が3種類存在し、それぞれの電荷にプラスとマイナスがある。

あるいは、プラスの電荷とマイナスの電荷に互いに打ち消し合う傾向が無かったらどうだろうか?

常識では考えられない事実として、大きな物質に存在しているプラスの電荷とマイナスの電荷の量は驚くべき精度で等しく、それ故に物質が殆ど完璧に中性であるという事実がある。

電荷は保存する

電荷は勝手に生成したり消滅したりせず、存在し続ける。プラスの電荷とマイナスの電荷が同じだけ消滅することなどは起こりうるが、ある種類の電荷だけが消えるということは起こらない。

故に、この宇宙の全電荷は未来永劫保存している。これを大局的(global)電荷保存という。

大局的電荷保存は全電荷に影響を及ぼさなければ良いので、例えばニューヨークで電荷が消滅した瞬間にサンフランシスコで電荷が生成されるということを許容しているように思える。

しかし、これは実際には起こらない。もしもニューヨークにあった電子がサンフランシスコへ移動するなら、電荷は移動の際に連続的な経路を辿る必要があるからである。これを局所的(local)電荷保存という。

後に我々は局所的電荷保存をあらわす法則をどのように数学的に定式化するのかを見ることになる。これは連続の方程式(continuity equation)と呼ばれる。

電荷は量子化される

これは古典電磁気学では必要ないが、実は電荷は大きさの基本となる単位電荷の整数倍というとびとびの値しか取らない。

陽子の電荷を+eとすると、電子の電荷はeであり、中性子の電荷は0である。パイ中間子の電荷は+e0eとなるし、炭素原子の原子核の電荷は+6eとなる。

電荷の値は7.392ee/2とはならない(実は、陽子と中性子は3つのクォーク(quark)からなっていて、それらは分数の電荷±23e±13eからなっている。

しかし、自由なクォークは、自然界あるいはいかなる諸過程においても存在しないとされている。そしてこのことは電荷は量子化されるという事実を変えないし、単に基本単位の大きさを減らすだけで済む。)。

この基本的な単位電荷はとてつもなく小さいため、通常の古典電磁気学では、量子化を完全に無視することが適切である。

水だって実際には分子というとびとびの塊で構成されている訳だが、もし我々が大きな水分子のまとまりを合理的に扱おうとするなら連続的な流体であるとして扱うことが出来る。

実は、これはMaxwell 自身の見方によく似ている。彼は陽子や電子などといったものは知らず、電荷はどんな大きさにでも分割したりくっつけたりすることが出来るような、ある種のジェリーのようなものであると考えていたようである。

単位系

電磁気学は単位系が複数存在するという問題があり、そのせいでしばしば議論が困難になる。この問題は力学における単位系の問題よりも深刻である。

力学では、単位系としてポンドとフィートと秒を使おうがキログラムとメートルと秒を使おうが大した問題にはならない。Newton の運動方程式は単位系に関わらず、同じ形、F=maであらわされるためである。しかし、電磁気学ではそうはいかず、各単位系でのCoulomb の法則は、

{F=q1q2R2ˆR (Gaussian)F=14πϵ0q1q2R2ˆR (SI)F=14πq1q2R2ˆR (HeavisideLorentz)

のように異なる形になってしまう。

Gauss 単位系とSI 単位系が最も有名であるが、素粒子理論においてはHeaviside-Lorentz 単位系が好まれる。Gauss 単位系には明確な理論的な利点があるが、多くの学部学生や学部の講義を担当する講師は、身近な単位が組み込まれているSI 単位系をより好む傾向にある。従って、この講義でもSI 単位系を用いることにする。

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