本記事では,特色を踏まえてフランス語の勉強法を解説していきます.
その説明を通じて,第二外国語としてフランス語を履修している大学生のテスト対策となるばかりではなく,これから第二外国語を選択する新入生のためにも,判断材料を提供することを目指します.
断っておくと,今回はあくまで大学での第二外国語の授業を念頭においているため,リスニング,スピーキング(これらをまとめて,フランス語界隈では‘オラルorale’と呼びます)についてはコミットせず,もっぱらリーディングとライティングに役立つ情報をまとめます.
基本的な学部での授業は,リーディングを中心としているからです.
フランス語入門のための勉強法
勉強法といっても,英語と基本的に変わるものではありません.
1. 名詞の性を覚える
具体的な勉強法を考える前に,フランス語の名詞の特色を手短にまとめましょう.
英語と違って厄介なのは,フランス語の名詞には決まった性(gender)がある,ということ.
これにしたがって形容詞や冠詞の変化が起こるだけあって,名詞の性を無視して意味だけを暗記しても限界があります.
つまり,名詞の意味と一緒に性を覚えておく必要があります.
具体的には,ノートなどに単語をまとめる際には,こんなふうに書くのが良いでしょう.
原語 | 性 | 意味 |
raison | f | 理由,根拠 |
「性」の項目に記した ‘f’ は,「女性形」を意味する ‘feminin’ の略号です.ちなみに男性形は ‘masculin’ を省略して ‘m’ とします.
フランス語の辞書には,単語の横に必ず, ‘f’ か ‘m’ と書いてありますので,注意しましょう.
もう1つ注意しておくべきは,フランス語の名詞のなかには,性によって語尾変化する名詞が存在するということです.職業名などがこれにあたります.
このような名詞を覚える場合には,どちらの形状でも同定できるようにしておく必要があるため,両方を同時に覚えてしまいましょう.
たとえば,次のように書いて覚えるのが無難です.
原語 | 性 | 意味 |
mâitre-esse | m, f | 先生,教師 |
この場合だと,原形にあたるmâitreが「男の先生」,変化形のmâitresseが「女の先生」を意味します.
2. 動詞の活用を覚える
フランス語の動詞には,主語の人称・数に応じた活用変化(語尾変化)があります.動詞についても名詞の場合と同様に,意味と同時に活用形を覚えておく必要があるのです.
というのも,たとえば‘employer’という動詞が「雇う」という意味だとわかっても,これが一人称・二人称・三人称でどう活用するのかわからなければ,文をつくることができなくなってしまうからです.
そのため,面倒ですが,動詞の活用には気を使う必要があるのです.
具体的にどうすればいいかというと,まずはフランス語の動詞活用のパターンを把握しましょう.
どの教科書にも載っていることですが,もっとも大きくとれば,活用は3タイプに分かれます.
② 第一群規則動詞 (-er型):lever, penser, cesserなど.
③ 第二群規則動詞 (-ir型):finir, saisir, tenirなど.
フランス語のほとんどの動詞は②のer型規則動詞に割り振られますから,これだけしっかり覚えておけばまずはなんとかなる気もしないでもありません.
しかしそうはいかないのは,日常的な動詞のほとんどが①不規則変化に該当するからです.
英語の過去分詞の活用を覚えたときのことを思い出してほしいのですが,英語の場合でも,日常的に頻出な語彙の多くが不規則変化に含まれます.(beやcome, getなど.)
フランス語でも事情は同様なので,やはり不規則変化を見逃してはいけません.
ここで細かく書き連ねるときりがないのでやめておきますが,具体的な勉強の順序を示しておきます.
やはり勉強の順序としては,①不規則動詞のなかで基本的なものを覚えてから,②er規則変化をマスターし,③ir規則動詞で仕上げる,というのが望ましいでしょう.
実際には,教科書などに準じて覚えていくことになるでしょうが,やはり大事なことは,ひとつひとつの活用形を毎日繰り返し練習することです.
3. 法と時制を学ぶ
言語には,法(mood)と時制(temps)というものがあります.
英語で言えば,直説法や仮定法などが法にあたり,言明の事実性の具合を明示します.
時制は言うまでもないでしょうが,現在形や過去形,未来形などなどです.
フランス語にも当然法と時制がありますが,注意するべきは2点です.
まず1つは,フランス語の法と時制は英語からみて種類やニュアンスがやや違うので,細かい点を実践的に理解していかなくてはならない,という点です.
もう1つは,フランス語の場合,法と時制とを動詞の活用によって表すので,それぞれの法に従って,時制ごとの人称変化を暗記しなくてはならない,という点です.
これらを細かく解説するのは本記事の主旨を越えますから,ここでは,特に法について学ぶ上で最難関となる,接続法の対策を紹介しましょう.
接続法とは,英語には存在しない法で,「事実に関するかどうかはさておき,語り手の気持ちや判断,思考を表示する」場合に用いられます.
すでになかば意味不明ですが,これに加えて困難なのが,接続法の活用です.
別に直説法のときと何が変わるわけではないですし,未来時制も存在しないので,むしろシンプルにはなっています.
しかし,初級の後半,つまり多くの学生が疲弊してきたころに登場するため,どうしてもハードに思われがちなのです.
しかし,用法に関して言えば,その難解な定義とは裏腹に,基本的にはシンプルです.というのも,接続法は,話者の心理状態を明示するための法であるというまさにそのことによって,話者の心理状態を明示することのできる動詞の後に続くのが通例だからです.
たとえば,「願うsouhaiter」や,「望むvouloir」,「疑うdouter」などがこれです.
つまり,接続法を伴うような動詞を知ってさえしまえば,ある程度のアタリをつけることができるのです.
もちろん接続法は,上記のように,特定の動詞に続く場合のみに用いられるわけでもありませんし,他にも接続法を伴うルールはいくつかあります.
そうはいっても,基本的には例外の少ない用法ですから,2,3のルールを覚えてしまえば,それほど身構えるものでもないと言えます.
以上の点は,フランス語の初歩のおわりごろ,大学のカリキュラムで言えば,一年目の終盤に,とくに効いてくるポイントだと言えます.
というのも,はじめのうちは「直説法現在」,要するに最もベーシックな法と時制における動詞の活用を勉強しますし,初歩の初歩ではそれで十分なのです.
たとえば,「私は学生です」のような初歩的な文章は,直説法現在で事足りるからです.
しかし,段々と,過去の内容や経験・完了について語る文章が増えてくると,その都度,法や時制に準じた動詞の活用を覚えることになります.
このときしっかりクリアしていくために重要なのは,やはり,始めの時点で直説法現在の活用をマスターしておくことにほかなりません.
はじめから面倒がらずに,しっかり積み上げていくのが重要です.
まとめ
さて,以上,フランス語の特色に則って,その勉強法についての見通しをつけてみました.
とくに注意したいのは,①名詞の性をかならず暗記すること,②動詞の活用形を疎かにしないこと,です.
フランス語のような屈折言語の勉強にあたっては,英語以上に,基礎がためが重要だと言えるでしょう.基礎をおろそかにすると会話すら成立しませんが,基礎をやってさえおけば,後がスムーズに進むというわけです.
最後に,③法と時制のニュアンスに気をつけながら,あくまで規則を頭に入れながら進めていくのが良いでしょう.接続法などの難解な法も,規則を覚えてしまえばこっちのものです.