d=2次元における共形代数
2次元と言う特殊な場合(今、平らな時空gμν=δμνを考えている。)は、微小な共形変換を特徴付ける条件(51)はシンプルな形になる。変換z↦w(z)が共形変換になるためには、
δμν↦(∂wμ∂zα)(∂wβ∂zν)δαβ∝δμν
となる必要がある。添字に1、2を代入すれば、具体的に以下のような式が導ける。
{(∂w0∂z0)(∂w0∂z0)+(∂w0∂z1)(∂w0∂z1)=(∂w1∂z0)(∂w1∂z0)+(∂w1∂z1)(∂w1∂z1)(∂w1∂z0)(∂w0∂z0)+(∂w0∂z1)(∂w1∂z1)=0
従って、微小な共形変換を特徴付ける条件は
∂0w1=±∂1w0 、 ∂0w0=∓∂1w1 (複号同順)
となる。この講義では、∂0w1=−∂1w0、∂0w0=+∂1w1を採用している。
∂0ϵ1=−∂1ϵ0 、 ∂0ϵ0=∂1ϵ1
これらの方程式は複素解析におけるCauchy-Riemann の微分方程式になるということが容易に分かるが、ここでは複素座標をz=x0+ix1、ˉz=x0−ix1と導入するのが便利である。従って、ϵ=ϵ0+iϵ1はzの関数、すなわち正則であり、一方でˉϵ=ϵ0−iϵ1はˉzの関数、すなわち反正則である。ϵ(z)とˉϵ(ˉz)は次のようにLaurent 展開出来る。
ϵ(z)=−∑n∈ZϵnZn+1 、 ˉϵ(ˉz)=−∑n∈Zˉϵnˉzn+1
従って、z↦z′=z+ϵ(z)とˉz↦ˉz′=ˉz+ˉϵ(ˉz)によって与えられる微小変換は共形である。ϵn,ˉϵn≠0のみが条件として与えられているときの共形変換の生成子は
ln=−zn+1∂z 、 ˉln=−ˉzn+1∂ˉz
となる。
問題
生成子ln、ˉlmの交換関係が以下であらわされることを示せ。
[ln,lm]=(m−n)lm+n 、 [ˉln,ˉlm]=(m−n)ˉlm+n 、 [ln,ˉlm]=0
特に生成子{l−1,l0,l1}とその複素共役は有限次元の部分代数sl(2,R)⊕sl(2,R)を生成する。この部分代数は大域的な共形変換に対応している。Kμ、Pμ、Dはそれぞれl−1、l0、l1に対応している。また、今、
sl(2,R)⊕sl(2,R)∼sl(2,C)∼A=(abcd) (a,b,c,d∈C and detA=1)
生成子lnとその交換関係のみを考えよう。量子論において、対応する演算子Lnは次のように、僅かに異なる交換関係を満たす。
[Ln,Lm]=(m−n)Lm+n+c12(m3−m)δm+n,0
これはVirasoro 代数として知られている。ここで、係数cは中心電荷と呼ばれるものである。交換関係(72)における付加項は量子効果であり、他の全ての演算子Lnと自明に交換するような恒等演算子Iが掛かっている。従って、Virasoro 代数は代数(71)の中心拡大であると言われる。