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【共形場理論】第17講 相関関数

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相関関数

共形対称性は、場の量子論における相関関数のとりうる形に重要な制限を課す。特に制御出来るパラメーターだけで$2$点及び$3$点関数の形式は決定される。このことは$d=2$の場合と$d>2$の場合の両方に適用できるが、後者の場合は更に自由度が残ってしまう。

古典論レベルでの共形変換における作用の不変性$\delta\mathcal{S}=0$は相関関数の形でのWard 恒等式

\begin{equation}
\sum_{i=1}^n\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)\cdots\delta\phi_i(x_i)\cdots\phi_n(x_n)}=0\tag{87}
\end{equation}

を導く。但し、$\delta\phi$は(80)で与えたものである。特に、スケール変換のWard 恒等式は

\begin{equation}
\sum_{i=1}^n\left(x^\mu_i\dfrac{\partial}{\partial x^\mu_i}+\Delta_i\right)\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)\cdots\phi_i(x_i)\cdots\phi_n(x_n)}=0\tag{88}
\end{equation}

と得ることが出来る。但し、$\Delta_i$は場$\phi_i$のスケール次元である。スケール変換と特殊共形変換に関連したWard 恒等式は相関関数の時空依存性に制限を与える。

例えば、スケール変換の下での不変性を用いると、スケール次元が$\Delta_1$と$\Delta_2$である$2$つの共形プライマリースカラー演算子$\phi_1$と$\phi_2$の$2$点関数は

\begin{equation}
\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)}=\lambda^{\Delta_1+\Delta_2}\Braket{\phi_1(\lambda x_1)\phi_2(\lambda x_2)}\tag{89}
\end{equation}

と変換する。スケール不変性より、今、以下の式が成り立っている。
\[
\left(x_1\dfrac{\partial}{\partial x_1}+\Delta_1+x_2\dfrac{\partial}{\partial x_2}+\Delta_2\right)\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)}=0
\]
これは$x_1-x_2=:r$として以下のように書ける。
\[
(r\partial_r+\Delta_1+\Delta_2)C(r)=0
\]
これを常微分方程式とみなして解けば、以下のように書ける。
\[
C(r)=\dfrac{C_{\phi_1\phi_2}}{r^{\Delta_1+\Delta_2}}
\]Poincare 不変性より、相関関数$\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)}$は$(x_1-x_2)^2$のみに依存しているから、次のような式で書けると結論付けることが出来る。

\begin{equation}
\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)}=\dfrac{C_{\phi_1\phi_2}}{(x_1-x_2)^{\Delta_1+\Delta_2}}\tag{90}
\end{equation}

ここで、$(x_1-x_2)^{\Delta_1+\Delta_2}$は$((x_1-x_2)^2)^{(\Delta_1+\Delta_2)/2}$の省略形であり、以後これを用いることにする。反転を利用すると、相関関数に更なる制限を与えることが出来る。すなわち、場が両方同じスケ—ル次元$\Delta$を持たない限り、$2$点関数は$0$である。特殊共形不変性より、今、次の式が成り立っている。
\begin{align}
&\sum_{i=1}^2\left(2\Delta_ix_i+x_i^2\dfrac{\partial}{\partial x_i}\right)\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)}\nonumber\\
=&\left\{-\dfrac{(\Delta_1+\Delta_2)(x_1^2-x_2^2)}{x_1-x_2}+2(\Delta_1x_1+\Delta_2x_2)\right\}\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)}\nonumber\\
=&(\Delta_1-\Delta_2)(x_2-x_1)\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)}=0\nonumber
\end{align}
更に、$2$点関数に現れる定数$C_{\phi_1\phi_2}$は実数かつ$\phi_1$と$\phi_2$の交換に対して対称、すなわち、$C_{\phi_1\phi_2}=C_{\phi_2\phi_1}$なので、スカラープライマリー演算子$\mathcal{O}$の空間において、共役演算子$\mathcal{O}$、$\bar{\mathcal{O}}$に対してのみ$0$でないように$C$を対角化することが出来る。最後に、$\mathcal{O}$、$\bar{\mathcal{O}}$を再定義することで、$C=1$とすることが出来るので、スケール次元$\Delta$のスカラー共役プライマリー演算子に対して次の結果を得る。

\begin{equation}
\Braket{\mathcal{O}(x_1)\bar{\mathcal{O}}(x_2)}=\dfrac{1}{(x_1-x_2)^{2\Delta}}\tag{91}
\end{equation}

同様の方法で、スケール次元$\Delta_i$の$3$点スカラー共役プライマリー演算子$\mathcal{O}_i~(i=1,2,3)$についても、$3$点関数を次の結果を得ることが出来る。

\begin{equation}
\Braket{\mathcal{O}_1(x_1)\mathcal{O}_2(x_2)\mathcal{O}_3(x_3)}=\dfrac{C_{\mathcal{O}_1\mathcal{O}_2\mathcal{O}_3}}{(x_1-x_2)^{\Delta_1+\Delta_2-\Delta_3}(x_2-x_3)^{-\Delta_1+\Delta_2+\Delta_3}(x_1-x_3)^{\Delta_1-\Delta_2+\Delta_3}}\tag{92}
\end{equation}

但し、定数$C_{\mathcal{O}_1\mathcal{O}_2\mathcal{O}_3}$は場の中身で決定される。$4$点関数$\Braket{\mathcal{O}_1\mathcal{O}_2\mathcal{O}_3\mathcal{O}_4}$は無次元複比$\frac{(x_1-x_2)^2}{(x_3-x_4)^2}$と$\frac{(x_1-x_3)^2}{(x_2-x_4)^2}$を含んでいるので、対称性による制限が足りない。

問題

相関関数(91)と(92)がスケール変換と特殊共形変換に関連したWard 恒等式を満たすことを示せ。

Euclid 符号を用いて、$2$次元以上の場合の一般的な共形プライマリー演算子$\mathcal{O}^i$を考えよう。添字$i$を表現$O(d)$(またはMinkowski 符号における$O(d-1,1)$)の作用する空間の成分を表記するために用いる。$\mathcal{O}^i$の例はベクトルカレント$J^\mu$またはエネルギー・運動量テンソル$T^{\mu\nu}$などである。この手順を場当たり的に全ての演算子に適用するのは非常に面倒である。しかし、我々は、共形変換の場合には誘導表現の方法を利用することも出来る。(59)で定義された行列$\mathcal{R}$は、Minkowski またはEuclid 符号における局所Lorentz 変換または局所回転を生じさせるが、それらの表現は場の量子論と対称性のところで既に研究している。従って、一般の共形プライマリー演算子は以下のように変換する。

\begin{equation}
\mathcal{O}^i(x)\mapsto\mathcal{O}^i(x’)=\Omega(x)^\Delta D(\mathcal{R}(x))^i_j\mathcal{O}^j(x)\tag{93}
\end{equation}

但し、$\Omega(x)$は(48)で定義されたスケール因子であり、$\Delta$は共形次元、$D(\mathcal{R}(x))$は局所Lorentz 変換に適切な表現である。

共形プライマリー演算子の$2$点関数を共形的に共変な形で構成することは容易である。(93)で変換する場$\mathcal{O}$と、共役な表現で変換する、すなわち、$\bar{\mathcal{O}}_i(x)\mapsto\Omega(x)^\Delta\bar{\mathcal{O}}_j(x)(D(\mathcal{R}(x))^{-1})^j_i$と変換するような共役な場$\bar{\mathcal{O}}$について、$\mathcal{O}$、$\bar{\mathcal{O}}$が$O(d)$の既約表現のときは、一般に次のように書くことが出来る。

\begin{equation}
\Braket{\mathcal{O}^i(x)\bar{\mathcal{O}}_j(y)}=\dfrac{C_\mathcal{O}}{(x-y)^{2\Delta}}D(I(x-y))^i_j\tag{94}
\end{equation}

但し、$C_{\mathcal{O}}$は演算子の再定義によって調整出来る、包括的なスケール因子である。

この結果を保存ベクトルカレント$J_\mu$に適用すれば、以下の結果を得ることが出来る。

\begin{equation}
\Braket{J_\mu(x)J_\nu(y)}=\dfrac{C_J}{(x-y)^{2(d-1)}}I_{\mu\nu}(x-y)\tag{95}
\end{equation}

更に、エネルギー・運動量テンソル$T_{\mu\nu}$に関しては、一般的な結果(94)によって以下の結果が成り立つことが分かる。

\begin{equation}
\Braket{T_{\mu\nu}(x)T_{\sigma\rho}(y)}=\dfrac{C_T}{(x-y)^{2d}}\mathcal{I}^T_{\mu\nu,\sigma\rho}(x-y)\tag{96}
\end{equation}

但し、

\begin{equation}
\mathcal{I}^T_{\mu\nu,\rho\sigma}(x-y)=I_{\mu\alpha}(x-y)I_{\nu\beta}(x-y)P^{\alpha\beta}_{\rho\sigma}\tag{97}
\end{equation}

であり、$P$は(12)で定義された、対称トレースレステンソルの空間での射影演算子である。$\mathcal{I}^T$は対応する反転テンソルを代表した書き方である。$\partial_\mu J^\mu$はスカラーで、$\partial_\mu T^{\mu\nu}$はベクトルなので、$J_\mu$と$T_{\mu\nu}$はそれぞれ$d-1$と$d$の次元を有している。このことは(95)と(96)は要求されている保存方程式を自動的に
満たすという事を保証している。$2$次元の場合は表記(96)は複素座標を用いれば簡単に書くことが出来る。このこと次に述べる。

$d=2$におけるエネルギー・運動量テンソル2点関数

2次元の場合、複素座標を$T=T_{zz}$、$\bar{T}=\bar{T}_{\bar{z}\bar{z}}$と導入するのが便利である。これを用いると、一般的な結果(96)は以下のように書けることが知られている。

\begin{equation}
\Braket{T(z)T(w)}=\dfrac{c/2}{(z-w)^4}\tag{98}
\end{equation}

ここで、$c$は(72)のVirasoro 中心電荷である。Virasoro 代数との整合性は、エネルギー・運動量テンソルをVirasoro 生成子で以下のようにLaurent 展開して

\begin{equation}
T(z)=\sum_{n\in\mathbb{Z}}z^{-n-2}L_n 、 L_n=\dfrac{1}{2\pi i}\oint dz z^{n+1}T(z)\tag{99}
\end{equation}

交換子$[L_m,L_n]$を計算することで得られる。

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