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【共形場理論】第18講 3点関数と4点関数

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$3$点関数と演算子積展開

$d$次元の共形プライマリー場における、共形的に共変な$3$点関数の一般的な公式は、(65)で定義したベクトル$Z$と(62)で与えられた$O(d)$の表現であるような反転行列$I$をあらわす適切な表現$D$を用いて、簡単に構成することが出来る。3つの任意の共形プライマリー演算子の$3$点関数の最も一般的な表記は

\begin{equation}
\Braket{\mathcal{O}^i_1(x)\mathcal{O}^j_2(y)\mathcal{O}^k_3(z)}=\dfrac{{D^i_1}_{i’}(I(x-z)){D^j_2}_{j’}(I(y-z))t^{i’j’k}(Z)}{(x-z)^{2\Delta_1}(y-z)^{2\Delta_2}}\tag{100}
\end{equation}

である。但し、$D_1$、$D_2$はそれぞれ$O(d)$の適切な表現であり、演算子$\mathcal{O}_1^i$、$\mathcal{O}_2^j$にそれぞれ作用する。更に、$t^{ijk}$は$Z$について同次、すなわち、

\begin{equation}
t^{ijk}(\lambda Z)=\lambda^{\Delta_3-\Delta_1-\Delta_2}t^{ijk}(Z)\tag{101}
\end{equation}

であり、

\begin{equation}
{D^i_1}_{i’}(R){D^j_2}_{j’}(R){D^k_3}_{k’}(R)t^{i’j’k’}(Z)=t^{ijk}(RZ)\tag{102}
\end{equation}

を全ての$R\in O(d)$において満たす必要がある。$t$が$O(d)$の変換の下で共変な同次関数であるということを保証してくれる、これらの条件は(100)が共形Ward 恒等式(87)を満たすという事を保証するのに十分である。今、十分条件の範囲で考えている。すなわち、扱う場をスカラーに限定せずに考えている。これは特に並進の関係(63)を任意の表現$D$に拡張したことに依っている。(100)は$3$つの演算子の交換に対して対称でないように思われるが、それは見かけ上そうなっているように見えるだけであるということが次の問題で明らかになる。

問題

(100)が$3$つの演算子の交換に対して対称であるということを以下の手順で示せ。

  • (i)

次の関係を示す。

\[
l_\mu^\alpha(x-z)Z_\alpha=-\dfrac{(x-y)^2}{(z-y)^2}X_\mu\tag{103}
\]
\[
I_\mu^\alpha(x-z)I_{\alpha\nu}(z-y)=I_{\mu\nu}(x-y)+2(x-y)^2X_\mu Y_\nu\tag{104}
\]
\[
I_\sigma^\alpha(y-z)I_{\alpha\mu}(z-x)=I_\sigma^\alpha(y-x)I_{\alpha\mu}(X)\tag{105}
\]

  • (ii)

上の関係を用いて、次の等価な表記を得る。

\begin{equation}
\Braket{\mathcal{O}^i_1(x)\mathcal{O}^j_2(y)\mathcal{O}^k_3(z)}=\dfrac{D^j_{2j’}(I(y-x))D^k_{3k’}(I(z-x))t^{j’k’i}(X)}{(x-y)^{2\Delta_2}(x-z)^{2\Delta_3}}\tag{106}
\end{equation}

但し、

\begin{equation}
t^{jki}(X)=(X^2)^{\Delta_1-\Delta_2}D^j_{2j’}(I(X))t^{ij’k}(-X)\tag{107}
\end{equation}

  • (iii)

Boson 場において、交換対称性が以下の式を要求することを示す。

\begin{equation}
t^{ijk}(Z)=t^{ijk}(-Z)={D^i}_{i’}(I(Z))t^{ki’j}(-Z)\tag{108}
\end{equation}

特別な演算子において、与えられた全ての条件を満たす$t(Z)$の最も一般的な式を得ることによって$3$点関数の明確な形を得ることが出来る。例えば、$3$点スカラー共形プライマリー演算子$\mathcal{O}_1$、$\mathcal{O}_2$、$\mathcal{O}_3$の場合、テンソル$t(Z)$は

\begin{equation}
t(Z)=C_{\mathcal{O}_1\mathcal{O}_2\mathcal{O}_3}\left(\dfrac{(x-z)(y-z)}{(x-y)}\right)^{\Delta_1+\Delta_2-\Delta_3}\tag{109}
\end{equation}

と得られるから、$3$点関数(100)は(92)と簡単化される。

一般の共形プライマリー演算子において、$t(Z)$は演算子積展開(OPE)における主要項を表現するから、直接的な重要性を持っている。

演算子積展開について補足する。$n$点関数$\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)\cdots\phi_n(x_n)}$を考える。$|x_1-x_2|\ll|x_i-x_j|$なら、\[
\Braket{\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)\cdots\phi_n(x_n)}\simeq\Braket{\phi'(x_1,x_2)\phi_3(x_3)\cdots\phi_n(x_n)}
\]
のように、$2$つの演算子の積は、ある$1$つの局所的な演算子に見える。但し、$\phi_1(x_1)\phi_2(x_2)\simeq\phi'(x_1,x_2)$であり、これを融合(fusion)という。$\phi$のベクトル空間を$\mathcal{A}$とすると、$\phi\times\phi\longrightarrow\phi$、すなわち融合は$\mathcal{A}\times\mathcal{A}\longrightarrow\mathcal{A}$という積を定義することである。この空間の基底が$\{\phi_i\}_{i=1,\cdots,n}$であるとする。このとき、$\phi'(x_1,x_2)$は
\[
\phi'(x,y)=\phi_i(x)\phi_j(y)=D_{ij}^k(x-y)\phi_k(y)
\]
と展開される。これが演算子積展開の考え方である。

$x\rightarrow y$において$\bar{\mathcal{O}}_{3k}$から演算子積$\mathcal{O}^i_1(x)\mathcal{O}^j_2(y)$への主要な寄与は

\begin{equation}
\mathcal{O}^i_1(x)\mathcal{O}^j_2(y)\sim\dfrac{1}{C_{\mathcal{O}_3}}t^{ijk}(x-y)\bar{\mathcal{O}}_{3k}(y)\tag{110}
\end{equation}

と得られる。但し、$C_{\mathcal{O}_3}$は$2$点関数$\Braket{\mathcal{O}_3\bar{\mathcal{O}}_3}$の規格化定数(94)である。計算すると、
\[
\Braket{\mathcal{O}_1^i\mathcal{O}_2^j\mathcal{O}_3^k}\sim\dfrac{1}{C_{\mathcal{O}_3}}t^{ijk’}(x-y)\Braket{\mathcal{O}_{3k’}\bar{\mathcal{O}}_3^k}
\]
となる。$2$点関数は先に規格化を議論しているから、結局、(110)となる。

明確な例として、$3$つのベクトルカレントの$3$点関数を得る。この場合、上で詳述した一般的な形式の応用すれば

\begin{equation}
\Braket{J_\mu(x)J_\nu(y)J_\omega(z)}=\dfrac{1}{(x-z)^{2d-2}(y-z)^{2d-2}}{I_\mu}^\alpha(x-z){I_\nu}^\beta(y-z)t_{\alpha\beta\omega}(Z)\tag{111}
\end{equation}

という結果を得る。但し、$t_{\mu\nu\omega}(Z)$はパラメーターがそれぞれ$a$、$b$の2つの独立した項を含んでいて、

\begin{equation}
t_{\mu\nu\omega}(Z)=a\dfrac{Z_\mu Z_\nu Z_\omega}{Z^{d+2}}+b\dfrac{1}{Z^d}(Z_\mu\delta_{\nu\omega}+Z_\nu\delta_{\mu\omega}-Z_\omega\delta_{\mu\nu})\tag{112}
\end{equation}

という形になっている。エネルギー・運動量テンソル$3$点関数における明確な表式は更に複雑である。一般に$3$つの独立した形式をもっている。$3$次元において、独立した形式の数は$2$つに減り、$2$次元においては$1$つに減る。Virasoro 中心電荷の場合も同様である。

$4$点関数

共形場理論においても、$4$点関数は$2$点関数と$3$点関数よりも制約が少ない。これは、$4$つの座標で$2$つの無次元不変量、つまり複比を構築することが可能であるという事実による。これらは

\begin{equation}
\eta=\dfrac{x_{12}^2x_{34}^2}{x_{13}^2x_{24}^2} 、 \xi=\dfrac{x_{14}^2x_{23}^2}{x_{13}^2x_{24}^2}\tag{113}
\end{equation}

と与えられる。但し、$x_{ij}^2\coloneqq(x_i-x_j)^2~(i,j=1,\cdots,4)$である。共形次元が$\Delta_i$のスカラー共形プライマリー演算子$\mathcal{O}_i$の$4$点関数は一般に以下の形を取る。

\begin{equation}
\Braket{\mathcal{O}(x_1)\mathcal{O}(x_2)\mathcal{O}(x_3)\mathcal{O}(x_4)}=\dfrac{1}{x_{12}^{\Delta_1+\Delta_2}x_{34}^{\Delta_3+\Delta_4}}F(\eta,\xi)\tag{114}
\end{equation}

ここで、$F(\eta,\xi)$は、含まれている演算子$2$つの交換の下で$4$点関数が不変でなければならないということ以外の制約がない、$2$つの複比の関数である。

関数$F(\eta,\xi)$は(110)で導入した、$2$つの演算子のペアの連続した短距離極限、例えば$x_1\rightarrow x_2$や$x_3\rightarrow x_4$などをとることによって得られる$2$重演算子積展開を通じて決まる、演算子積展開係数に関係していて、

\begin{equation}
\Braket{\mathcal{O}_{\Delta_1}(x_1)\mathcal{O}_{\Delta_2}(x_2)\mathcal{O}_{\Delta_3}(x_3)\mathcal{O}_{\Delta_4}(x_4)}=\sum_{\Delta\Delta’}\dfrac{c_{\Delta_1\Delta_2\Delta}}{x_{12}^{\Delta_1+\Delta_2-\Delta}}\dfrac{1}{x_{13}^{\Delta+\Delta’}}\dfrac{c_{\Delta_3\Delta_4\Delta’}}{x_{34}^{\Delta_3+\Delta_4-\Delta’}}\tag{115}
\end{equation}

である。それぞれ演算子積展開を行うと以下のようになる。
\[
\left\{
\begin{array}{rcl}
\mathcal{O}_{\Delta_1}(x_1)\mathcal{O}_{\Delta_2}(x_2)&\simeq&\displaystyle\sum_{\Delta}C(x_1-x_2)\mathcal{O}_{\Delta}(x_1)=\dfrac{c_{\Delta_1\Delta_2\Delta}}{(x_1-x_2)^{\Delta_1+\Delta_2}}\mathcal{O}_{\Delta}(x_1)
&&
\mathcal{O}_{\Delta_3}(x_3)\mathcal{O}_{\Delta_4}(x_4)&\simeq&\displaystyle\sum_{\Delta’}C(x_3-x_4)\mathcal{O}_{\Delta’}(x_3)=\dfrac{c_{\Delta_3\Delta_4\Delta’}}{(x_3-x_4)^{\Delta_3+\Delta_4}}\mathcal{O}_{\Delta’}(x_3)
\end{array}
\right.
\]
$2$点関数の係数は$1$と決めていたので、(115)の右辺では分子が$1$になっている。但し、$c_{\Delta_i\Delta_j\Delta_k}$は$3$点関数(92)または演算子積展開(109)によって決められる。

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