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【共形場理論】第16講 エネルギー・運動量テンソルと共形場理論

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エネルギー・運動量テンソルと共形場理論

場の量子論で見たNoether の定理に加えて、全ての連続対称性は保存電荷に関連付けられる。並進における保存電荷はエネルギー・運動量テンソル$T_{\mu\nu}$であったのに対して、Lorentz 変換における保存電荷は$N_{\mu\nu\rho}=x_\nu T_{\mu\rho}-x_\rho T_{\mu\nu}$によって与えられる。関連するNoether 電荷は次のようになる。

\begin{equation}
\left\{
\begin{array}{rcl}
P_\nu&=&\displaystyle\int d^{d-1}x{T^0}_\nu
&&
M_{\nu\rho}&=&\displaystyle\int d^{d-1}x(x_\nu{T^0}_\rho-x_\rho{T^0}_\nu)
\end{array}
\right.\tag{82}
\end{equation}

残された共形変換、すなわち、スケール変換と特殊共形変換もそれぞれ保存電流$J_{(D)\mu}$、$J_{(K)\mu\nu}$を生じる。

\begin{equation}
J_{(D)\mu}=x^\nu T_{\mu\nu} 、 J_{(K)\mu\nu}=x^2T_{\mu\nu}-2x_\nu x^\rho T_{\mu\rho}\tag{83}
\end{equation}

今、考えている作用の式は
\[
\delta S=\int d^dx~\left\{(\mathrm{E.o.M.})\delta\phi^i+\partial_\mu\left(\dfrac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_\mu\phi^i)}\right)\delta\phi^i\right\}
\]
である。右辺の中括弧$\{ \}$内の第2項は特に$\partial_\mu {T^\mu}_\nu\delta x^\nu$と書ける。但し、
\[
\delta\phi^i=\partial_\nu\phi^i\delta x^\nu 、 T^{\mu\nu}=\dfrac{\delta\mathcal{L}}{\delta(\partial_\mu\phi)}\partial^\nu\phi^i
\]
である。このとき、カレントは$T_{\mu\nu}\delta x^\nu$であり、今は特に$T_{\mu\nu}\epsilon^\mu(x)$として考えている。
\[
\epsilon^\mu(x)=a^\mu+\omega^\mu_\nu x^\nu+\lambda x^\mu+b^\mu x^2-2(b\cdot x)x^\mu
\]
であるから、残りのスケール変換と特殊共形変換のチャージはそれぞれ(83)、(84)で与えられる。対応する生成子は次のようになる。

\begin{equation}
\left\{
\begin{array}{rcl}
D&=&\displaystyle\int d^{d-1}xx^\rho{T^0}_\rho
&&
K_\nu&=&\displaystyle\int d^{d-1}x\left(x^2{T^0}_\nu-2x_\nu x^\rho{T^0}_\rho\right)
\end{array}
\right.\tag{84}
\end{equation}

これらの対称性はエネルギー・運動量テンソルに制限を課す。場の量子論で見たように、これはLorentz 不変性と並進不変性によって添字に対して対称な、すなわち、$T^{\mu\nu}=T^{\nu\mu}$が成り立ち修正エネルギー・運動量テンソルと呼ばれるものになる。もし理論においてスケール変換不変性が考慮されている場合には、そのエネルギー・運動量テンソルはトレースレス、すなわち、${T^\mu}_\mu=0$となる必要がある。何故なら、

\begin{equation}
0=\partial^\nu J_{(D)\nu}=\partial^\nu(x^\rho T_{\nu\rho})=(\partial^\nu x^\rho)T_{\nu\rho}+\underbrace{x^\rho\partial^\nu T_{\nu\rho}}_{並進の式より0となる}={T^\rho}_\rho\tag{85}
\end{equation}

となるからである。スケール変換による電荷、あるいはそれに対応した電流はそれぞれスケール変換を生成する。従って、エネルギー・運動量テンソルがトレースレスであることは場の古典論におけるスケール不変性を保証する。

問題

Lorentz 符号のエネルギー・運動量テンソルを以下で定義する。

\begin{equation}
T_{\mu\nu}=-\dfrac{2}{\sqrt{-g}}\dfrac{\delta\mathcal{S}}{\delta g^{\mu\nu}}\tag{86}
\end{equation}

但し、$\mathcal{S}=\int d^dx\sqrt{-g}\mathcal{L}$は古典的な作用である。$T_{\mu\nu}$は対称かつゲージ不変であることも分かっている。作用$\mathcal{S}$の場の理論がスケール不変であるなら、$T_{\mu\nu}$がトレースレスであることを示せ。

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