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【共形場理論】第15講 場の変換法則

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場の変換

共形場理論(CFT)における場は共形代数の既約表現を変換する。変換の表現を一般の次元において構成するためには、誘導表現の方法を利用すれば良い。これは数学の言葉では、表現$D(R)$の部分表現$A$だけを使って、表現$D(R)$と等価な表現を作るという方法である。まず、$x=0$における場$\phi$の変換の特徴を調べる。そして、運動量ベクトル$P^\mu$を利用して場の平行移動を行うことで任意の点$x$における一般の変換則を調べることが出来る。我々はこの方法を既にPoincare 代数のところで用いていた。Lorentz 変換において、以下の式を前提としていた。

\begin{equation}
[J_{\mu\nu},\phi(0)]=-\mathcal{J}_{\mu\nu}\phi(0)\tag{73}
\end{equation}

但し、$\mathcal{J}_{\mu\nu}$は有限次元におけるLorentz 群の表現であり、場$\phi(0)$におけるスピンを決定する。これに加えて、共形代数では、スケール変換の演算子$D$を用いた交換関係も前提とする。

\begin{equation}
[D,\phi(0)]=-i\Delta\phi(0)\tag{74}
\end{equation}

この関係は場$\phi$がスケール次元$\Delta$を持っていること、すなわちスケール変換$x\mapsto x’=\lambda x$において場$\phi$が次のように変換することを示唆している。

\begin{equation}
\phi(x)\mapsto\phi'(x’)=\lambda^{-\Delta}\phi(x)\tag{75}
\end{equation}

特に、共形代数の既約表現の下で共変的に変換するような場$\phi$はスケール次元が固定されているので、スケール変換演算子$D$の固有状態となっている。更に、共形代数において、次のような関係を満たす、共形プライマリー場という特別な場を考えることが重要である。

\begin{equation}
[K_\mu,\phi(0)]=0\tag{76}
\end{equation}

$D$の固有状態に$D$と$P_\mu$、$K_\mu$の交換関係を加えることで、$P_\mu$はスケール次元を上げて、$K_\mu$はスケール次元を下げるということが分かる。ユニタリー共形場理論では場のスケール次元に下限が存在する。このことは、いかなる共形表現においても、$x^\nu=0$において(76)が$K_\mu$によって消滅させられるが故に最小次元の演算子を含んでいるということを示唆している。従って、共形代数の既約な積が与えられた場合、共形プライマリー場は(76)の関係式によって決定される最小スケール次元を持った場になる。他の全ての場、すなわち$\phi$の共形ディセンダントは共形プライマリー場に$P_\mu$を演算させることで得ることが出来る。

共形場理論におけるユニタリー性下限

4次元共形場理論において、スケール変換とLorentz 変換に対応した部分代数$\mathfrak{so}(1,1)\oplus\mathfrak{so}(3,1)$を考える。これによって共形代数の表現をスケール次元$\Delta$と表2で与えたLorentz 量子数$j_{\mathrm{L}}$、$j_{\mathrm{R}}$を用いて$(\Delta,j_{\mathrm{L}},j_{\mathrm{R}})$でラベル付けすることが可能になる。いかなる場の量子論のおいても、ユニタリー性は、表現における全ての状態が正のノルムをもつことを示唆する。これはユニタリー表現に下限を課すことに対応している。$\mathfrak{so}(4,2)$のコンパクト部分代数$\mathfrak{so}(2)\oplus\mathfrak{so}(4)$を考えよう。この群のユニタリー表現は$(\Delta,j_{\mathrm{L}},j_{\mathrm{R}})$でラベル付けされ、次の制約を満たすことが必要となる。

\begin{equation}
\left\{
\begin{array}{l}
\Delta\geq1+j_{\mathrm{L}}~\mathrm{for}~j_{\mathrm{R}}=0、 \Delta\geq1+j_{\mathrm{R}}~\mathrm{for}~j_{\mathrm{L}}=0\\
\Delta\geq2+j_{\mathrm{L}}+j_{\mathrm{R}}~\mathrm{for~both}~j_{\mathrm{L}},j_{\mathrm{R}}\neq0
\end{array}
\right.\tag{77}
\end{equation}

例えば、スカラーであれば$\Delta\geq1$、ベクトルであれば$\Delta\geq3$、対称トレースレステンソルであれば$\Delta\geq4$を満たす必要がある。これらの下限は運動方程式を満たす自由スカラー場$\phi$、保存電流$J_\mu$、保存対称トレースレステンソル$T_{\mu\nu}$において飽和している。$d$次元において、スカラーの下限は一般に次のように書ける。

\begin{equation}
\Delta\geq\dfrac{d-2}{2}\tag{78}
\end{equation}

我々はこれまで$x^\mu=0$における$\phi$の変換の特徴を考えてきた。(46)で導入した演算子$\mathcal{T}(x)$を用いると、$\phi(x)=\mathcal{T}(x)\phi(0)\mathcal{T}^{-1}(x)$と書くことが出来るので、共形プライマリー場$\phi(x)$における交換関係を次のように導くことが出来る。

\begin{equation}
\left\{
\begin{array}{rclcr}
{[P_\mu,\phi(x)]}&=&-i\partial_\mu\phi(x)&=:&\mathcal{P}_\mu\phi(x)
&&\\
{[D,\phi(x)]}&=&-i\Delta\phi(x)-ix^\mu\partial_\mu\phi(x)&=:&\mathcal{D}\phi(x)
&&\\
{[J_{\mu\nu},\phi(x)]}&=&-\mathcal{J}_{\mu\nu}\phi(x)+i(x_\mu\partial_\nu-x_\nu\partial_\mu)\phi&=:&\tilde{\mathcal{J}}\phi(x)
&&\\
{[K_\mu,\phi(x)]}&=&\left\{i(-x^2\partial^\mu+2x_\mu x^\rho\partial_\rho+2x_\mu\Delta)-2x^\nu\mathcal{J}_{\mu\nu}\right\}\phi(x)&=:&\mathcal{K}_\mu\phi(x)
\end{array}
\right.\tag{79}
\end{equation}

問題

$\epsilon(x)$で特徴づけられる一般の微小共形変換(52)を利用して、変換(79)が

\begin{equation}
\delta_\epsilon\phi(x)=-\mathscr{L}_\nu\phi(x) 、 \mathscr{L}_\nu=\epsilon(x)\cdot\partial+\dfrac{\Delta}{d}\partial\cdot\epsilon(x)-\dfrac{i}{2}\partial_{[\mu}\epsilon_{\nu]}(x)\mathcal{J}_{\mu\nu}\tag{80}
\end{equation}

と簡単に書けることを示せ。

問題

(79)で定義された$\mathcal{P}_\mu$、$\mathcal{D}$、$\mathcal{K}_\mu$、$\tilde{\mathcal{J}}_{\mu\nu}$が共形代数の表現を構成することを示せ。

2次元の場合、共形プライマリー場と共形準プライマリー場には変換の性質に違いがある。これは解説3.4で議論されている。

$2$次元共形場理論における(準)プライマリー場

2次元の場合、2つの異なる種類のプライマリー場を区別する必要がある。準プライマリー場が交換関係(79)を満たすのに対して、プライマリー場は$2$次元共形変換$z\mapsto f(z)$、$\bar{z}\mapsto f(\bar{z})$において、次のように変換する。

\begin{equation}
\phi(z,\bar{z})\mapsto\phi'(z,\bar{z})=\left(\dfrac{\partial f}{\partial z}\right)^h\left(\dfrac{\partial\bar{f}}{\partial\bar{z}}\right)^{\bar{h}}\phi\left(f(z),\bar{f}(\bar{z})\right)\tag{81}
\end{equation}

準プライマリー場は、この変換則が(71)において$n=\{-1,0,1\}$であるような大域的な変換のみに適用される場を指している。

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