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【場の量子論と対称性】第09講 P-Lベクトルの性質

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Pauli-Lubanski ベクトルの性質

ここでPoincare 群とPauli-Lubanski ベクトルの定義と性質及びその証明をまとめておくことにする。

Poincare 群とPauli-Lubanski ベクトルに関する諸性質

Pρを並行移動の生成子(運動量)、Siを空間の角運動量、JμνをLorentz 変換の生成子とする。JμνJμν:=i(xμνxνμ)+Aμνである。例えば、考えている場がスピノールなら、(19)に従ってAμν=Jμνとなる。他の本ではAμνではなくSμνとなっていることが多いが、Siと混同しないようにここではAμνとした。

次に、Pauli-Lubanski ベクトルWσを用意しよう。Wをウェッジ積とHodge 双対を用いてW:=(JP)と定義する。このとき、座標基底を用いて
J:=12Jμνdxμdxν  P:=Pρdxρ
としておく。すると、JP及び(JP)はそれぞれ
JP=12JμνPρdxμdxνdxρ
(JP)=12JμνPρ(dxμdxνdxρ)=ϵμνρσdxσ=12JμνPρϵμνρσdxσ=:Wσdxσ
となる。これによりPauli-Lubanski ベクトルの定義が完了した。

  • (1)PρJμνの関係式;
    [Pρ,Jμν]=i(ημρPνηνρPμ)
  • (2)P2がCasimir 演算子であること;
    [PμPμ,Pρ]=[PμPμ,Jνλ]=0}
  • (3)Pauli-Lubanski ベクトルがHermitian であること;
    (Wσ)=Wσ}
  • (4)Pauli-Lubanski ベクトルが運動量演算子と可換であること;
    [Wσ,Pρ]=0}
  • (5)Pauli-Lubanski ベクトルと運動量演算子の内積が0であること;
    PσWσ=0}
  • (6)WσJμνの関係式;
    [Wσ,Jμν]=i(ημσWνηνσWμ)
  • (7)W2がCasimir 演算子であること;
    [WμWμ,Pρ]=[WμWμ,Jνλ]=0
  • (8)Pauli-Lubanski ベクトルが軌道角運動量に依らないこと;
    Wσ=i2ϵμνρσAμνρ
  • (9)Pauli-Lubanski ベクトルの時間成分と空間成分;
    Wσ=(W0,Wi)=(PiSi,P0Si+12ϵijρσPjJρσ) (i,j,k=1,2,3)
  • (10)空間の角運動量Si4元運動量の時間成分P0が可換であること;
    [Si,P0]=0
  • (11)pμ=(m,0,0,0)のとき、W2の固有値がm2s(s+1)であること;
    WσWσ=P20SiSi
  • (12)PσPσ=WσWσ=PσWσ=0ならば、運動量ベクトルとPauli-Lubanski ベクトルが平行であること

証明

次のようにそれぞれ示す。

(1)
[Pρ,Jμν]=[iρ,i(xμνxνμ)+Aμν]=[ρ,xμνxνμ]+[ρ,Aμν]=0=ρ(xμν)ρ(xνμ)xμνρ+xνμρ=(ρxμ)ν(ρxν)μ=δμρνδνρμ=ημληλρνηνληλρμ=ημρνηνρμ=i(ημρPνηνρPμ)

(2)
[PμPμ,Pρ]=0は自明。もう片方の等式は次のように示せる。
[PμPμ,Jνλ]=Pμ[Pμ,Jνλ]+[Pμ,Jνλ]Pμ=Pμ×i(ηνμPληλμPν)+i(ημνPλημλPν)×Pμ=i(PνPλPλPν+PλPμPνPλ)=0

(3)
(Wσ)=12ϵμνρσPρJμν=PρJμν=12ϵμνρσ(JμνPρ+[Pρ,Jμν])=Wσ+12iϵμνρσ(ημρPνηνρPμ)0=Wσ

(4)
[Wσ,Pρ]=12ϵμνλσ[JμνPλ,Pρ]=12ϵμνλσ(Jμν[Pλ,Pρ]=0+[Jμν,Pρ]=i(ηρμPνηρνPμ)Pλ)=i2(ϵμρλσPμϵρνλσPν)Pλ=0

(5)
PσWσ=12ϵμνρσPσJμνPρ=0

(6)
PσWσ=0を利用して題意を示す。
0=[PσWσ,Jμν]=Pσ[Wσ,Jμν]+[Pσ,Jμν]Wσ
なので、これより
Pσ[Wσ,Jμν]=[Pσ,Jμν]Wσ=Pσ(iημσWνiηνσWμ)
従って、以下の式が成り立つことが示された。
[Wσ,Jμν]=i(ημσWνηνσWμ)

(7)
[Wσ,Pρ]=0なので[WσWσ,Pρ]=0は自明。もう片方の等式は次のように示せる。
[WσWσ,Jνλ]=Wσ[Wσ,Jνλ]+[Wσ,Jνλ]Wσ=iWσ(ηνσWληλσWν)+i(ησνWλησλWν)Wσ=i(WνWλWλWν+WλWνWνWλ)=0

(8)
Wσ=12ϵμνρσJμνPρ=12ϵμνρσ{PρJμνi(ημρPνηνρPμ)}=12ϵμνρσ(iρ){i(xμνxνμ)+Aμν}i2ϵμνρσ(ημρPνηνρPμ)=0=12ϵμνρσ(ημρν+xμρνηνρμxνρμ)=0i2ϵμνρσρAμν=Aμνρ=i2ϵμνρσAμνρ

(9)
W0=12ϵμνρ0JμνPρ=12ϵijk0JjkPi=PiSi
Wi=12ϵμνρiJμνPρ=12ϵμν0i=ϵ0iμνJμνP0=P0Si+12ϵμνji=ϵijμνJμνPj=P0Si12ϵijμνJμνPj

(10)
[Si,P0]=12ϵ0ijk[Jjk,P0]=iηj0Pk+iηk0Pj=0

(11)今、Wσ=(0,P0Si)より、
WσWσ=P0SiP0Si=m2SiSi

(12)運動方向をx軸の向きに取るとPσ=(P0,P1,0,0)とすることが出来る。PσPσ=0より(P0)2=(P1)2なので、Pσ=(P0,±P0,0,0)となる。

一方、PσWσ=0より0=PσWσ=P0W0+P1W1=P0W0±P0W1なので、W1=±W0となることが分かる。

そして、WσWσ=0より(W0)2+(W0)2+(W2)2+(W3)2=0なので、W2=W3=0となることが分かる。

以上より、Pσ=(P0,±P0,0,0)Wσ=(W0,±W0,0,0)なのでPWは比例することが言えた。これは直観的に言えば、2つのヌルベクトルは内積が0ならば平行であるということである。

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