ベクトル解析演習3
今回はベクトル値関数の偏微分と曲面の法ベクトルについて問題演習をしましょう。
要点のまとめ
2変数のベクトル値関数r(u,v)=(x(u,v),y(u,v),z(u,v))を考えます。n変数の場合も同様に拡張します。
このとき、u,vのベクトル値関数r,r1,r2、u,vの関数f、スカラーλ,μに対して、以下の式がそれぞれ成り立ちます。
∂∂u(λr1+νr2)=λ∂r∂u+μ∂r2∂u , ∂∂u(fr)=∂f∂ur+f∂r∂u
∂∂u(r1⋅r2)=∂r1∂u⋅r2+r1⋅∂r2∂u , ∂∂u(r1×r2)=∂r1∂u×r2+r1×∂r2∂u
∂r∂s=∂u∂s∂r∂u+∂v∂s∂r∂v , ∂r∂s×∂r∂t=∂(u,v)∂(s,t)(∂r∂u×∂r∂v)
また、2変数ベクトル値関数r(u,v)が与える曲面をSとすると、∂r∂u×∂r∂vはSの各点でSの法ベクトルになります。
n=∂r∂u×∂r∂v|∂r∂u×∂r∂v|
とおくと、nはSの点Pにおける単位法ベクトルで、∂r∂u×∂r∂vと同じ向きのものです。単位法ベクトルは±nで与えられます。
問題3
xz平面の円周(x−R)2+z2=r2(r,Rは0<r<Rを満たす定数)をz軸の周りに1回転させてできる曲面(トーラス面)を考える。これは閉曲面である。
(1)
この曲面上の任意の点(x,y,z)に対するu,vを適切に設定することで、
x=(R+rcosu)cosv, y=(R+rcosu)sinv, z=rsinu, 0<u<2π, 0<v<2π
(2)
この曲面の単位法ベクトルを求めよ。
解答3
(1)
(x−R)2+z2=r2は半径r、中心(x,z)=(R,0)の円周なのでy軸に垂直な円周である。簡単のためz軸の周りで回転させる前の円周についてxy平面上で考えてみる。今、円周上に点Pを設け、線分PRとx軸によってつくられる角のうち角度が小さいほうの角をuとおく。
そうすると点P(x,y,z)は(x,y,z)=(R+rcosu,0,rsinu)と表せる。
ところがこの円周は今y=0であるが、z軸の周りに円周を回転させるので常にx=R+rcosu,y=0とは限らない。
今、xy平面上にできた円は半径がR+rcosuであるし、点Pのz成分は時間に依らず常にrsinuである。
従って先に定めたuに加えて新たに線分OPとx軸によってできる角のうち角度の小さい角をvとおけば
(xyz)=((R+rcosu)cosv(R+rcosu)sinvrsinu)
と確かに表せる。
(2)
∂r∂u=(∂x(u,v)∂u,∂y(u,v)∂u,∂z(u,v)∂u)=(−rsinucosv,−rsinusinv,rcosu)
∂r∂v=(∂x(u,v)∂v,∂y(u,v)∂v,∂z(u,v)∂v)=(−(R+rcosu)sinv,(R+rcosu)cosv,0)
従って
∂r∂u×∂r∂v=(R+rcosu)r(cosucosvcosusinvsinu) , |∂r∂u×∂r∂v|=(R+rcosu)r
よって求める単位法ベクトルは
±∂r∂u×∂r∂v|∂r∂u×∂r∂v|=±(cosucosvcosusinvsinu)