弦理論入門07
点粒子から弦へ
次に閉弦について考えよう。量子化は、光錐量子化を用いた開弦の場合の類推で実演される。唯一の違いは、関数XMのモード展開であり、ここでは2つのモードαinと˜αin (i=1,⋯,D−2)を含むということである。Lnと˜Lnは2つのVirasoro 代数のコピーを生じる。開弦の時のように、Lnと˜Lnは演算子の順序のあいまいさに苦しむこととなる。故に、物理的状態|Ψ⟩におけるVirasoro 拘束条件は
Ln|ψ⟩=˜Ln|ψ⟩=0 for all n∈N
(L0−a)|ψ⟩=(˜L0−˜a)|ψ⟩=0
となる。但し、aと˜aは
a=˜a=−D−212
で与えられる。次の形をとる物理的状態|ψ⟩を考えよう。
|N,˜N,k⟩=[D−2∏i=1∞∏n=1(ai†n)Nin(˜ai†n)˜Nin√Nin!˜Nin!]|0,0,k⟩
但し、|0,0,k⟩は固有値がkMの固有状態pMであり、全ての演算子ain、˜ainによって消滅させられる。状態の弦の質量は
M2=2α′(D−2∑i=1∞∑n=1(nNin+n˜Nin))+2−D12
で与えられる。Ninと˜Ninはそれぞれa†inainと˜a†in˜ainの固有状態である。物理的な状態を得るためには、弦の状態|ψ⟩は、Virasoro 生成子L0、˜L0においてレベル一致条件
(L0−˜L0−a+˜a)|ψ⟩=0
を満たす。更に
N=D−2∑i=1∞∑n=1nNin , ˜N=D−2∑i=1∞∑n=1n˜Nin
を定義することでレベル一致条件は次の式と等価であることになる。
N−˜N=0
レベル一致条件は繊細な方法で振動子ain、˜ainに結びつくことには注意しなければならない。
最も質量が低い閉弦の状態のスペクトラムを考えよう。真空|0,0,k⟩は最も軽い状態であり、M2=2−D6α′で、これは再びタキオン的である。これらの第一励起状態は以下のような形となる。
ai1˜aj1|0,0,k⟩ with mass M2=26−D6α′
D=26次元において、これらの状態は対称トレースレステンソルと反対称テンソルとスカラーに分解することが出来るような質量がない2階のテンソルであるということに注意しなければならない。これまでの議論より、対称トレースレステンソルが重力を、スカラーはディラトンを発現させる。そして、反対称テンソルはKalb-Ramond 場を生ずる。
弦の第一励起状態を
ai1˜aj1|k⟩Cij(k)
と書くと、Cij(k)はこの状態があらわす粒子の偏極状態をあらわす係数となるが、これは光錐座標X±以外のD−2個の方向Xiに対する回転群SO(D−2)によってテンソルとして変換される。Cij(k)はD次元標的時空上の場として解釈されるが、Cij(k)によってあらわされるのは物理的な自由度だけであることに注意しなければならない。すなわち、Lorentz 対称性SO(D−1,1)を持つような理論に含まれる場全てではなく、その理論の運動方程式を解くことによって得られる運動量kの平面波の自由度をあらわしているのがCij(k)である。D次元のどのような場を考えれば平面波の自由度として(D−2)2個の成分を持つテンソルCij(k)が現れるかということを考察しなければならない。
このあとのコラムで見るように、以下のような結論になる。
弦のモード | 対応するD=26次元の場 |
Cijの対称トレースレス部分 | 重力場gMN |
Cijのトレース部分 | ディラトン場ϕ |
Cijの反対称部分 | Kalb-Ramond 場BMN |