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【素粒子物理学】素粒子物理学3-対称性と保存則

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$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
$\def\kb{k_{\text{B}}}$
$\def\dag{\dagger}$

素粒子物理学3

ここでは対称性と保存則についてまとめていきます。

対称性と保存則

物理学では、対称性や保存則によって禁止されていない現象は起こりうると考えて良いことになっている。例えば、電子は負の電荷を持つ粒子の中で最も軽い粒子なので崩壊することはない。では、陽子は陽電子よりも重いのになぜ崩壊しないのだろうか?これを説明するためにはバリオン数保存則を導入しなければならない。バリオンは$+1$のバリオン数を持っていて、反バリオンは$-1$のバリオン数を持っている。他の粒子のバリオン数は$0$である。バリオン数は変化の前後で保存する必要がある。

同様に、余分なニュートリノがベータ崩壊で放出されるのはレプトン数保存則により説明が可能である。レプトンは$+1$のレプトン数を持っていて、反レプトンは$-1$のレプトン数を持っている。他の粒子のレプトン数は$0$である。レプトン数は変化の前後で保存する必要がある。正確には、この保存則には電子レプトン数とミューレプトン数とタウレプトン数の保存が内包されている。これをレプトンファミリー数保存則という。例えば、ミュー粒子$\mu^-$の崩壊における各レプトン数は以下のように計算できる。

\begin{equation}
\left\{
\begin{array}{rcccccc}
\mu^-&\rightarrow&e^-&+&\bar{\nu}_e&+&\nu_\mu\\
L:1&=&1&-&1&+&1\\
L_e:0&=&1&-&1&+&0\\
L_\mu:1&=&0&+&0&+&1
\end{array}
\right.
\end{equation}

自然界には離散的な対称性も存在する。演算子$C$(荷電共役)は粒子と反粒子を入れ替える演算子である。演算子$P$(パリティ)は空間の向きを反転させる演算子である。演算子$T$(時間反転)は時間の向きを反転させる演算子である。場の量子論には、ローレンツ不変な全ての局所的な場の量子論の作用はこれらの演算子の積$CPT$に対して対称でなければならないという重要な定理が存在する。但し、場の量子論は$C,P,T$の演算子について個々に対称性を有している訳ではない。${}^{60}\text{Co}$のベータ崩壊を観察した古典的な実験において崩壊生成物が原子核のスピンに対して一方向に優先的に生成されたことから、弱い相互作用は「最大限にパリティーが破れた理論である。」と言われる。実際、弱い相互作用において$CP$対称性は破れている。従って、$CPT$定理から、弱い相互作用では$T$も破れている必用があるということが示唆される。歴史的には、1964年に中性$K$中間子の崩壊過程で$CP$対称性の破れが初めて観測された。

中間子は全てボソンである。$\pi$中間子、$K$中間子、$D$中間子、$B$中間子はスピン$0$、それ以外の中間子はスピン$1$である。$\pi$中間子はスピンが$0$で、第$1$世代のクォークからなる。種別は$\pi^0$、$\pi^+$、$\pi^-$の3種類がある。$\pi^+$はアップクォークと反ダウンクォークからなり、$\pi^-$はダウンクォークと反アップクォークからなる。この$2$つは互いに粒子・反粒子の関係となっている。$\pi^0$は自分自身が反粒子である。

最近の発展

標準模型が数学的に一貫性を持つためには、少なくともヒッグスボソンという粒子を新たに考慮する必要がある。これは$2012$年に実験で発見された。この粒子は自発的対称性の破れと呼ばれる機構によって他の素粒子に質量を与える役割を持つ。既存の超対称な場の量子論と一貫性を持つためには、ヒッグスボソンの質量は$125~\text{GeV}$となる必要がある。超対称な場の量子論とは超対称性理論に基づいた場の量子論のことである。超対称性理論とは全ての素粒子には超パートナーと呼ばれる、自分自身と電荷が同じでスピンが$1/2$だけ異なる粒子が存在しているという理論である。しかし、今日、超対称性は実験的に発見されていない。

太陽から放出される電子ニュートリノは地球ではタウニュートリノとして検出される。これは、自由に伝搬するニュートリノは電子ニュートリノとタウニュートリノの重ね合わせだからである。

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