MENU

【超対称性理論】第23講 質量がない表現

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

質量がない表現

Poincare 代数は超対称性代数の一部分なので、質量がない状態|pμ,λは、運動量演算子Pμの固有値である運動量pμとヘリシティλを用いてラベル付けされる。この状態には質量がないから、光的な系pμ=(E,0,0,E)を選ぶ。ヘリシティλpμの小群の生成子であるJ12の固有値である。

pμの選び方によっては、Casimir 演算子PμPμ˜Cμν˜Cμν0になって、反交換関係は次のようになる。

{Qaα,ˉQb˙β}=2δabσμα˙βPμ=2δabE(σ0+σ3)α˙β=4δabE(1000)α˙β

質量がない粒子|pμ,λQa2を作用させてみよう。{Qa2,ˉQb˙2}=0なので、

pμ,λ|ˉQa˙2Qb2|˜pμ,˜λ=0

となる。これはQa2が自明に満たすことを暗示している。すなわち、任意のa=1,,NにおいてQa2|pμ,λ=0である。超電荷の成分Q1{Q1,ˉQ˙1}=4Eを満たすから、生成・消滅演算子を次のように定義する。

ab=Qb12E  ab=ˉQb˙12E

これにより、次の反交換関係を得ることが出来る。

{ab,ac}=δbc  {ab,ac}={ab,ac}=0

(26)を用いると、次の交換関係を得ることが出来る。

[Qaα,J12]=(σ12)αβQaβ=12(σ3)αβQaβ

(152)において、特にα=1のとき、|pμ,λを作用させると、Qa1|pμ,λはヘリシティλ12をもつと結論づけることが出来る。従って、Qb1abはヘリシティを12だけ下げる。同様の議論で、ˉQb˙1|pμ,λのヘリシティはλ+12なので、ˉQb˙1abはヘリシティを12だけ上げる。

超対称性多重項を構成するために、最小のヘリシティλをもつ真空状態|Ωを考える。まず簡単な超対称性、すなわちN=1の場合を考える。定義より、|Ωは最も低いヘリシティを持つ状態であるから、Q1|Ωを消失させる。すなわち、Q1|Ω=0となる。ˉQ˙1を作用させるとヘリシティを12上げることが出来る。しかし、ˉQ2˙1であるから、完全な多重項は次の2つの粒子状態に尽きる。

|Ω=|pμ,λ  a|Ω=|pμ,λ+12

もしこれらのような多重項を相対論的場の量子論において実現させたければ、CPT 共役な状態を加える必要がある。

|pμ,±λ  |pμ,±(λ+12)

これらはCPT 不変性を保証するために、逆のカイラリティをもっている。この考え方によって得られる多重項の例として、λ=0におけるN=1カイラル多重項やλ=12におけるベクトル多重項がある。ベクトル多重項がゲージ代数において値を有する場合、そのベクトル多重項をゲージ多重項と呼ぶ。

これらの結果を拡張された超対称性代数の質量がない表現に一般化しよう。この場合の唯一の違いは、N個の異なる生成演算子ˉQa˙1が真空状態|Ωに作用するということである。この場合、異なる2N個の状態をとることが出来る。|λ|1の場合の質量がない超対称性多重項は表4にまとめられている。N=1ゲージ+CPT1つとN=1カイラル+CPT1つでN=2ゲージ+CPT1つ作ることが出来る。また、N=1ゲージ+CPT2つでN=2ハイパーを1つ作ることが出来る。そして、N=2ゲージ+CPT1つとN=2ハイパーを1つでN=4ゲージを1つ作ることが出来る。

一方で、N=3ゲージ+CPTのようにCPTを課さない限りN=3は実現出来ない。

表4 |λ|1の場合の質量がない超対称性多重項

N=1 N=1 N=2 N=2 N=3 N=4
|λ|1 ゲージ+CPT カイラル+CPT ゲージ+CPT ハイパー ゲージ+CPT ゲージ
1 1 0 1 0 1 1
1/2 1 1 2 2 3+1 4
0 0 1+1 1+1 4 3+3 6
1 1 0 1 0 1 1
Boson 的自由度+Fermion 的自由度  2+2  2+2 4+4 4+4 8+8 8+8
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。