N=1超空間形式
超対称性多重項と超対称性理論のLagrangian を書き下すために便利な方法は、よく知られているBoson 的な座標に加えて、Fermion 的な座標を導入することによって得られる。特に、平らな3+1次元におけるN=1超対称性であれば、通常のMinkowski 座標R4に左巻きWeyl スピノール座標θαと右巻きWeyl スピノール座標ˉθ˙αを加える。これによって、超空間R4|4を得る。この空間における座標zAを以下のようにあらわす。
zA=(xμ,θα,ˉθ˙α)
超対称性代数に対応する群を得るためには、代数の生成子に対して指数を取る必要がある。特に、ここでは演算子を
G(x,θ,ˉθ)=exp(−ixμPμ+iθQ+iˉθˉQ)
と定義する。但し、θαQα=θαϵαβQβ、ˉθ˙αˉQ˙α=ˉθ˙αϵ˙α˙βˉQ˙βで与えられるようなスカラー積を用いる。Pμ、Q、ˉQの間における(反)交換関係と同等なBaker-Campbell-Hausdorff の公式を用いると、このような2つの演算子の積を次のように得ることが出来る。
G(0,ξ,ˉξ)G(x,θ,ˉθ)=G(xμ+iθσμˉξ−iξσμˉθ,θ+ξ,ˉθ+ˉξ)
添字をあからさまに書けば、例えば、θσμˉξ=θασμα˙αˉξ˙αなどとなる。
(175)を用いると、超空間座標(xμ,θ,ˉθ)に作用するg(ξ,ˉξ)=G(0,ξ,ˉξ)の作用を見い出すことが出来て、
g(ξ,ˉξ): (xμ,θ,ˉθ)↦(xμ+iθσμˉξ−iξσμˉθ,θ+ξ,ˉθ+ˉξ)
となる。但し、これは、
Qα=∂∂θα−iσμα˙αˉθ˙α∂μ
ˉQ˙α=∂∂ˉθ˙α−iθασμα˙βϵ˙β˙α∂μ
を用いた微分演算子ξQ+ˉξˉQ=ξαQα+ˉξ˙αˉQ˙αによって代表させることが出来る。
もし、(175)でG(0,ξ,ˉξ)によるG(x,θ,ˉθ)の積を、左からの積ではなく右からの積として考えるならば、
Dα=∂∂θα+iσμα˙αˉθ˙α∂μ
ˉD˙α=−∂∂ˉθ˙α−iθασμα˙α∂μ
を用いた微分演算子ξD+ˉξˉD=ξαDα+ˉξ˙αˉD˙αを用いる必要がある。
問題
超空間座標z=(x,θ,ˉθ)を作用させた(177)は、超空間変換(176)を生じることを示せ。
問題
以下の式を導け。
{{Qα,ˉQ˙α}=2iσμα˙α∂μ{Qα,Qβ}={ˉQ˙α,ˉQ˙β}=0{Dα,ˉD˙α}=−2iσμα˙α∂μ{Dα,Dβ}={ˉD˙α,ˉD˙β}=0{Dα,Qβ}={Dα,ˉQ˙β}=0{ˉD˙α,Qβ}={ˉD˙α,ˉQ˙β}=0
一般の超場
超空間の各点(x,θ,ˉθ)にF(x,θ,ˉθ)で写されるような一般の超場F(x,θ,ˉθ)を考えてみよう。ここで、Fはスカラー場である必要はなく、ベクトル場やスピノール場のように添字が走っても良いということに注意しよう。この超場F(x,θ,ˉθ)はθとˉθのべきで展開することが出来る。展開係数は超対称性多重項に対応する場である。θとˉθの反交換性から、F(x,θ,ˉθ)の展開はθ2ˉθ2で切り捨てられて、
F(x,θ,ˉθ)=f(1)(x)+θf(2)(x)+ˉθˉf(3)(x)+θ2f(4)(x)+ˉθ2f(5)(x)+θσμˉθf(6)μ(x)+θ2ˉθˉf(7)(x)+ˉθ2θf(8)(x)+θ2ˉθ2f(9)(x)
となる。但し、f(1)(x)、f(4)(x)、f(5)(x)、f(9)(x)はスカラー場であり、f(2)(x)、f(8)(x)は左巻きWeyl スピノール場であり、f(3)(x)、f(7)(x)は右巻きWeyl スピノール場であり、f(6)(x)はベクトル場である。Fのある成分の場を指定するために、F|⋯という書き方をする。すなわち、ˉf(3)を指定するためにはF|ˉθ=ˉf(3)と書き、f(9)を指定するためにはF|θ2ˉθ2=f(9)と書く。通常、θ2ˉθ2と積になっている成分場f(9)(x)はD項と呼ばれ、一方でθ2、ˉθ2と積になっているf(4)(x)、f(5)(x)はF項と呼ばれる。
超場Fの超対称性変換δϵは個々の成分場に超対称性変換を作用させることで定義され、
δϵF(x,θ,ˉθ)=δϵf(1)(x)+θδϵf(2)(x)+ˉθδϵˉf(3)(x)+θ2δϵf(4)(x)+ˉθ2δϵf(5)(x)+θσμˉθδϵf(6)μ(x)+θ2ˉθδϵˉf(7)(x)+ˉθ2θδϵf(8)(x)+θ2ˉθ2δϵf(9)(x)
となる。また、(177)と(178)で定義された演算子Q、ˉQを用いることで
δϵF(x,θ,ˉθ)=(ϵQ+ˉϵˉQ)F(x,θ,ˉθ)
とあらわすことが出来る。超場Fを展開することで、成分場の超対称性変換に対する法則を得ることが出来る。一般の超場F(x,θ,ˉθ)の成分場は、自由度が多過ぎてN=1超対称性多重項に適合しないということに注意が必要である。換言すれば、超場Fの成分場は超対称性代数の既約表現のもとで変換しないということである。一般の超場Fに条件を課すことで類似の超場として、N=1カイラル超場やN=1ベクトル超場を見出すことが出来る。まず、カイラル超場から始めることにしよう。次回、カイラル超場の導入を行う。