量子力学12
今回は黒体輻射の問題を考えていきます。
黒体輻射
自身に当たった全ての放射を吸収しそれらを一切反射しないと理想化された物体を黒体と名付ける。すなわち、黒体からの放射は全て黒体の温度で定まる熱放射によるものであるとみなせる。原子の遷移の時とは違って、この放射は1つの振動数ではなく、全てのスペクトルである。黒体は物体の色が黒いという意味ではないことに注意が必要である。例えば、スペクトルが可視光領域のときはピークの振動数に対応した色に見える。例えば、太陽は黒体放射の考え方を適用できる代表例で、黄色に対応した振動数がピークの振動数であるとみなせる。
プランクの法則において黒体から放射される電磁波の分光放射輝度は角振動数ωと温度Tの関数として以下のように書ける。
I(ω,T)∝hω3c21eℏω/(kBT)−1
これを黒体以外の全領域で積分することで、熱放射により黒体から放出されるエネルギーは以下の式のように熱力学温度の4乗に比例することが得られる。これをシュテファン・ボルツマンの法則と言う。
dPdA∝T4
これは、熱源の温度が2倍されると、物質を温めるのに必要な時間は2−4倍されることを意味している。
さて、スペクトルのピークの位置は以下の式のようにウィーンの変位則によって得られる。
λmax=(2.9×10−3 K⋅m)T−1
この法則からスペクトルのピークの波長と黒体の温度は片方が分かればもう片方も求めることができる。この式から黒体の温度が高くなるとピークの波長は紫外側に変化することが分かる。また、これは振動数の式ではなく波長の式であるが習慣の問題である。ここでT−1の前に掛かる因子2.9×10−3 K⋅mは覚えておく必要がある。
よく出題される例として、宇宙背景放射のピークの波長は1.06 nmでこのときの黒体の温度は2.7 Kである。