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【量子力学】量子力学4-具体的な問題2

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$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}$
$\def\rmd#1{\mathrm{d}{#1}}$
$\def\Braket#1{\langle{#1}\rangle}$
$\def\Bra#1{\langle{#1}|}$
$\def\Ket#1{|{#1}\rangle}$
$\def\kb{k_{\text{B}}}$
$\def\dag{\dagger}$

量子力学04

今回と次回は1次元のポテンシャル問題として、無限に深い井戸型ポテンシャル、自由粒子、デルタ関数型ポテンシャル、有限の深さの井戸型ポテンシャルの4種類を扱うことにします。

他の1次元のポテンシャル問題の処方箋

これら$4$種類のハミルトニアンにはいずれも束縛状態が存在する。また、デルタ関数型と有限の深さの井戸型ポテンシャルには散乱状態も存在する。散乱状態に関する計算は別の小節を設けて詳しく扱うことにする。

$x\rightarrow\pm\infty$で$V(x)\rightarrow0$のとき、$E<0$の状態は束縛状態、$E>0$の状態は散乱状態となる。一方で、調和振動子のように$x\rightarrow\pm\infty$で$V(x)\rightarrow\infty$のときは、全ての状態が束縛状態である。

一般に、$1$次元の問題には縮退が存在しないことは覚えておくとよい。ポテンシャル問題の波動関数を選ぶ問題は頻出である。ポテンシャル問題を解くとき、井戸内では正弦波、井戸外では指数関数的減衰、波動関数は常に連続、という条件から選択肢を絞る。

無限に深い井戸型ポテンシャル

無限に深い井戸型ポテンシャルとは、ポテンシャル$V(x)$が$0\leq x\leq a$の範囲で$0$、それ以外では$\infty$となっているような問題である。この系の固有関数とエネルギー固有値は、

\begin{equation}
\psi_n=\sqrt{\dfrac{2}{a}}\sin{\left(\dfrac{n\pi x}{a}\right)},~E_n=\dfrac{n^2\pi^2\hbar^2}{2ma^2}
\end{equation}

とあらわせる。ここで、$n$は$1$からカウントすることに注意しなければならない(調和振動子の場合は$n=0$から数えるのだった。)。この問題で重要なのは、$a$、$\hbar$、$m$でエネルギーの次元を作る場合は$\hbar^2/(ma^2)$しかありえないということである。これにより、質量が$2$倍されるとエネルギーは$\frac{1}{2}$倍される、などの問題が想定できるであろう。

調和振動子の場合と同様、$3$次元の問題、
\[
V(x,y,z)=\left\{
\begin{array}{cl}
0&(0\leq,x,y,z\geq a)
\infty&(\mathrm{otherwise})
\end{array}
\right.
\]
の場合、固有関数は$1$次元のものの積だし、エネルギー固有値は$1$次元のものの和である。但し、$r自由粒子

自由粒子の問題では粒子に一切の力がはたらかないため、ポテンシャルはいたるところでゼロである。固有関数とエネルギー固有値は、

\begin{equation}
\psi(x)=\mathrm{e}^{\pm ikx},~E=\dfrac{\hbar^2k^2}{2m}
\end{equation}

である。ここで、エネルギー固有値が常に正であることに注意。この表式は簡単に暗記できる。すなわち、今、ポテンシャルがゼロだからエネルギー固有値は運動エネルギーに等しい。ド・ブロイの関係式$p=\hbar k$を$p^2/(2m)$へ代入すれば、直ちに先の式を導くことができる。

表式から明らかなように、自由粒子の固有関数は規格化不可能である。固有関数の重ね合わせは規格化が可能であり、これを波束と呼ぶ。上手く規格化係数を選べば最小不確定性の波束を構成できるという事実だけ覚えておけば良い。これは勿論、$x$についてのガウス関数となる。

固有関数が規格化不可能であることは、粒子の運動量を完璧に定められないことを意味している。これは不確定性原理の主張とも一貫している。

アインシュタインの関係式$E=\hbar\omega$より、$\omega(k)\propto k^2$であることが示唆されるが、これは古典的な波の結果、$\omega=ck$と矛盾する。

デルタ関数型ポテンシャル

デルタ関数型ポテンシャル$V(x)=-A\delta(x)$は、$x=0$のところでポテンシャルが無限に深くなり、$x=0$以外のところでは自由粒子と同じ状態である。無限に深い井戸型ポテンシャルの問題は既に扱っているので、ここでは$\psi'(x)$の境界条件にだけ気を付ければ良い。無限に深い井戸型ポテンシャルでやったように、$x<0$で$\psi\propto\mathrm{e}^{\kappa x}$、$x>0$で$\psi\propto\mathrm{e}^{-\kappa x}$となるので、これとシュレーディンガー方程式を積分することによって$\kappa$を求めることになる。

ここで大切なのは、その計算過程ではなく、$\kappa$の表式とそこから読み取れることである。今、登場している文字は$\hbar$、$m$、そしてポテンシャルの係数$A$である。このうち$A$の次元は$[\mathrm{J\cdot m}]$である(デルタ関数は積分して無次元になることから、デルタ関数そのものの次元が$[\mathrm{m}^{-1}]$である。)。よって、$[\mathrm{m}^{-1}]$は$mA/\hbar^2$で作れるので、固有関数とエネルギー固有値は以下のように得られる。
\[
\psi(x)=\dfrac{\sqrt{mA}}{\hbar}\exp{\left(-\dfrac{mA|x|}{\hbar^2}\right)}~,~E=-\dfrac{mA^2}{2\hbar^2}
\]
この表式は覚えなくても良い。大切なのは、デルタ関数型ポテンシャルにおける束縛状態は$1$つしか存在しないということである(調和振動子や井戸型ポテンシャルの場合と異なり、$n$が出てきていない。)。

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