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【電磁気学】第17講 ベクトルの積分④-回転の基本定理

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回転における基本定理

回転における基本定理は以下の式が成り立つことを主張している。

\begin{equation}
\int_\mathcal{S}(\nabla\times\bmsv)\cdot\rmd\bmsa=\oint_\mathcal{P}\bmsv\cdot\rmd\bmsl\tag{57}
\end{equation}

これをStokes の定理(Stokes’ theorem)という。他の基本定理のように、この定理もある領域(今は表面$\mathcal{S}$)における導関数(今は回転)の積分は境界(今は周の長さの張り合わせ$\mathcal{P}$)での関数の値に等しいということをあらわしている。発散定理の時と同様に、境界項はそれ自身が積分(今は周積分)になっているということに注意せよ。

幾何学的には、回転はベクトル$\bmsv$のねじれ具合を測っているということを思い出してみよう。回転の大きい領域は渦である。もし渦のある所に小さな車輪を置いたら回転することになる。今、いくつかの面での回転の積分(厳密に言うと、面を通る回転の流れ)は渦巻きの総量をあらわしていて、図1.31のように面の縁を歩き回って、流れが境界をどれだけ辿っているのかを調べることで渦巻きの総量が判断出来ることになる。実際、$\oint\bmsv\cdot\rmd\bmsl$はしばしば$\bmsv$の循環とも呼ばれる。

 

図1.31

もしかすると、Stokes の定理には線積分が時計回りなのか反時計回りなのかという曖昧さが含まれていることに気が付いたかもしれない。もし間違った方を選ぶと、計算結果も符号が逆になってしまう。これは面積分に符号の曖昧さがあるので、途中で変えたりせずに一貫してどちらかを選んでいれば問題にならない。では、$\rmd\bmsa$はどちらを向いているだろうか?閉曲面では発散定理と同様に外向きの法線の方向をとる。しかし、開いた曲面ではどのようにすれば良いだろう?図1.32にあるように、Stokes の定理における一貫性は他の全ての場合と同様に右手系と決められている。

 

図1.32

今、任意の境界線を共有する曲面は無限に多く存在している。針金を輪にして石鹸水に浸してみる。石鹸膜は針金の輪っかを境界として表面を構成する。。ここに息を吹きかけると石鹸膜が膨張し、同じ境界を持つより大きな表面になる。通常、流束積分は積分する面によって値が決定的に異なるが、回転の場合は明らかにそうではないことが分かる。Stokes の定理では、$\int(\nabla\times\bmsv)\cdot\rmd\bmsa$は境界の周りの$\bmsv$の線積分に等しく、後者はあなたが選択した特定の表面を採る必要はない。これによって、次の$2$つの系が言える。これらの系は、勾配における基本定理での系の類推で理解出来る。我々は後に平行性を更に発展させることになる。

系1:$\int(\nabla\times\bmsv)\cdot\rmd\bmsa$は境界線のみに依存し、特定の面には依存しない。

系2:任意の閉経路において$\oint(\nabla\times\bmsv)\cdot\rmd\bmsa=0$が成り立つ。なぜなら、風船の口のように点になるまで縮み、(57)の右辺が消えるためである。

問題

図1.33のように、各辺の長さが$1$の正方形の面を用いて、ベクトル関数$\bmsv=y^2\hbx+(2xy+3y^2)\hby+(4yz^2)\hbz$について、Stokes の定理を確認せよ。

 

図1.33

解説

この場合、$\nabla\times\bmsv=(4z^2-2x)\hbx+2z\hbz,~~~\rmd\bmsa=\rmd y\rmd z\hbx$であり、$\rmd\bmsa$は$x$方向を向いているとして、反時計回りの線積分を考えている。$\rmd\bmsa=-\rmd y\rmd x\hbx$と書くことも出来るが、その場合時計回りでの計算を強いられることになる。この面は$x=0$なので、

\[
\int(\nabla\times\bmsv)\cdot\rmd\bmsa=\int_0^1\int_0^14z^2\rmd y\rmd z=\dfrac{4}{3}
\]

となる。

では、線積分はどうなるだろうか?線積分では以下のように経路を$4$分割して考える必要がある。

(1)

\[
x=0,~~z=0,~~~\bmsv\cdot\rmd\bmsl=3y^2\rmd y,~~~\int\bmsv\cdot\rmd\bmsl=\int_0^13y^2\rmd y=1
\]

(2)

\[
x=0,~~y=1,~~~\bmsv\cdot\rmd\bmsl=4z^2\rmd z,~~~\int\bmsv\cdot\rmd\bmsl=\int_0^14z^2\rmd z=\dfrac{4}{3}
\]

(3)

\[
x=0,~~z=1,~~~\bmsv\cdot\rmd\bmsl=3y^2\rmd y,~~~\int\bmsv\cdot\rmd\bmsl=\int_1^03y^2\rmd y=-1
\]

(4)

\[
x=0,~~y=0,~~~\bmsv\cdot\rmd\bmsl=0\rmd y,~~~\int\bmsv\cdot\rmd\bmsl=\int_0^10\rmd z=0
\]

従って、求める積分は以下のように計算出来る。この結果は面積分での計算に一致している。

\[
\oint\bmsv\cdot\rmd\bmsl=1+\dfrac{4}{3}-1+0=\dfrac{4}{3}
\]

(3)での処理方法に注目してみよう。これは経路が左になるから、$\rmd\bmsl=-\rmd y$と書きたいのだ。もしどうしてもというなら$0$から$1$まで積分を実行することでこれを避けることが出来るが、マイナスにはせずに常に$\rmd\bmsl=\rmd x\hbx+\rmd y\hby+\rmd z\hbz$と書くことにして積分が$y$方向になるように極限を取る方がはるかに安全である。

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