℘、ζ、及びσ関数の加法公式
今℘(u)−℘(v)の式においてuを変数と考え、vを周期に等しくない定数とする。そうすればこの式は一つの楕円関数で、その極は0、0に、零点はv、−vにある。ゆえに前回の(I)の表示式により
℘(u)−℘(v)=Cσ(u−v)σ(u+v)σ(u)2
とおくことが出来る。この各辺をuの冪級数に展開すれば
℘(u)−℘(v)=1u2−⋯
Cσ(u−v)σ(u−v)σ(u)2=C−σ(v)2+⋯(u+⋯)2=−Cσ(v)2u2+⋯
ゆえに両辺を比較してC=−1σ(v)2を得る。これを前の表示式に入れれば
℘(u)−℘(v)=−σ(u−v)σ(u+v)σ(u)2σ(v)2
となる、これは重要な公式である。ただし上の証明ではvを仮に定数としたのであるが、実は周期以外の値ならば何でもよいのであるから、(1)においてはu、v共に変数と考えてよい。
(1)の両辺の対数をとり、これをu及びvに関して偏微分すれば次の式を得る。
℘′(u)℘(u)−℘(v)=ζ(u−v)+ζ(u+v)−2ζ(u)−℘′(v)℘(u)−℘(v)=−ζ(u−v)+ζ(u+v)−2ζ(v)
これを辺々加えれば
ζ(u+v)=ζ(u)+ζ(v)+12℘′(u)−℘′(v)℘(u)−℘(v)
の結果を得る。これをζ関数の加法公式という。
注意: 第16回で述べた加法公式の定義によればζ(u+v)をζ(u)、ζ(v)のみで表さなければならない訳であるが、それは後に述べるように実は不可能なのでやむを得ず℘(u)等を混ぜるのである。しかし℘(u)=−ζ′(u)であることを利用すれば(2)の右辺はζ(u)、ζ(v)及びその第二次までの導関数で表される。ゆえに広義においてこれをζの加法公式といってもよい訳である。
(2)の両辺をさらにuで偏微分すれば次の式を得る。
℘(u+v)=℘(u)−12∂∂u℘′(u)−℘′(v)℘(u)−℘(v)
これすなわち℘関数の加法公式である。
(3)の右辺における微分を実行し、その結果を整理すれば
℘(u+v)=2{℘(u)℘(v)−14g2}{℘(u)+℘(v)}−g3−℘′(u)℘′(v)2{℘(u)−℘(v)}2
となる。なおその他種々の形に書き直すことが出来るが、その計算は各自の演習にすることにして、そのいくつかの結果のみをここに記しておく。
℘(u+v)+℘(u)+℘(v)=14{℘′(u)−℘′(v)℘(u)−℘(v)}2
|℘(u)℘′(u)1℘(v)℘′(v)1℘(w)℘′(w)1|=0ただしu+v+w=(周期)
注意: 1。 (5)は今までの諸式からも誘導されるが、次の方針でも独立に証明される。まず(5)の左辺の行列式だけを考え、wの代わりにzの変数を入れれば、この行列式はzに関する第三位の楕円関数である。そしてその極は0、0、0にあり、零点の中二つはu、vである。ゆえに残りの一つをwとすれば、第23回定理6により、u+v+w=0+0+0+(周期)。これからただちに(5)を得る。
注意: 2。℘関数の加法公式は℘(u+v)、℘(u)、℘(v)、℘′(u)、℘′(v)を含んでいるが、既に知られるように℘‘2は℘の三次式で表されるから、結局加法公式は
R{℘(u+v)、℘(u)、℘(v)}=0(Rは有理整式)
の形に書かれる。この性質を称して℘関数は代数的加法公式をもつという。
さて最後にσ関数の加法公式を求めるのであるが、これもある意味において広義のものしか出来ない。まずA、B、C、Dを任意の数とすると
(A−B)(C−D)+(A−C)(D−B)+(A−D)(B−C)=0
が恒等式であることは明らかである。そこで今特に
A=℘(u)、 B=℘(u1)、 C=℘(u2)、 D=℘(u3)
とおく、ただしu、u1、u2、u3は各独立な変数とする。前の(1)により
A−B=℘(u)−℘(u1)=−σ(u+u1)σ(u−u1)σ(u)2σ(u1)2
C−D、その他についても同様に計算し、それらを上の恒等式に入れ、分母を払えば次の式を得る。
σ(u+u1)σ(u−u1)σ(u2+u3)σ(u2−u3)+σ(u+u2)σ(u−u2)σ(u3+u1)σ(u3−u1)+σ(u+u3)σ(u−u3)σ(u1+u2)σ(u1−u2)=0
これをσ関数の加法公式という。
(6)において
u+u1=a、 u−u1=b、 u2+u=c、 u2−u3=d
とおけば、加法公式は次の形にも書かれる。
σ(a)σ(b)σ(c)σ(d)+σ(a′)σ(b′)σ(c′)σ(d′)+σ(a”)σ(b”)σ(c”)σ(d”)=0ただし{a′=12(a+b+c+d)b′=12(a+b−c−d)c′=12(a−b+c−d)d′=12(−a+b+c−d){a”=12(a+b+c−d)b”=12(a+b−c+d)c”=12(a−b+c+d)d”=12(a−b−c−d)
参考文献
参考文献は以下の通り。
[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。
[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。
[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001
[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49 ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。
[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017