℘関数の乗法公式
既に℘関数の加法公式を知っているから、それによって℘(2u)、℘(3u)、⋯等を℘(u)で表すことが出来るはずであるがその計算は非常に面倒である。試しに℘(2u)を求めてみよう。 前回(4)においてv=uとおくと右辺が不定形になるから、まず
limv→u℘′(u)−℘′(v)℘(u)−℘(v)=limv→u℘”(v)℘′(v)=6℘(u)2−12g2℘′(u)
として、次の式を得る。
℘(2u)+2℘(u)=14{6℘(u)2−12g2}2℘′(u)2
したがって
℘(2u)=14{6℘(u)2−12g2}24℘(u)3−g2℘(u)−g3−2℘(u)=℘(u)4+12g2℘(u)2+2g3℘(u)+116g224℘(u)3−g2℘(u)−g3
これでは℘(3u)を求めるのすら容易でない、そこで次のような工夫をする。前回(1)の公式において、u、vをそれぞれnu、uとおく、ただしnは自然数とする。
℘(nu)−℘(u)=−σ(¯n+1u)σ(¯n−1u)σ(nu)2σ(u)2
これをさらに変形するために今
ψn(u)=σ(nu)σ(u)n2
とおけば、(1)は次のようになる。
℘(nu)=℘(u)−ψn+1(u)ψn−1(u)ψn(u)2
ここでψn(u)の関数について考えてみる。まずこれはuの楕円関数である、試しにuに2ω1を加えれば
ψn(u+2ω1)=σ(nu+2nω1)σ(u+2ω1)n2=(−1)ne2nη1(nu+nω1)σ(nu)(−1)n2e2n2η1(u+ω1)σ(u)n2=σ(nu)σ(u)n2=ψn(u)
さてψn(u)は楕円関数であってかつnが奇数ならば偶関数、偶数ならば奇関数である(証明は容易につき略す)。ゆえにψn(u)はnが奇数ならば℘(u)の有理関数、nが偶数ならば℘(u)の有理関数に℘′(u)をかけたものに等しい(これは次回で証明する)。次にその式を今少し詳しく調べよう。
まずnを奇数とする。ψn(u)はその定義からただちにわかる通り基本周期平行四辺形内ではu=0においてのみ極をもち、その位数は明らかにn2−1である。ゆえにψn(u)を℘(u)で表せば、℘(u)→∞のときにのみψn(u)→∞となるから、℘(u)の有理整関数であってその次数はn2−12でなければならない。すなわち
ψn(u)=c0℘(u)n2−12+c1℘(u)n2−32+⋯
両辺をuの冪級数に展開し、その最低冪の項の係数を比較すればc0=nであることを知る。ゆえに
ψn(u)=n℘(u)n2−12+⋯
nが偶数のときはψn(u)を℘′(u)で割ったものについて上と同様に考えれば、
ψn(u)=℘′(u){−n2℘(u)n2−42+⋯}
であることが証明される。
よって一般にnが奇数のときはψn(u)=Pn、nが偶数のときはψn(u)=℘′(u)Pn
とおくことにすれば、(2)は次のようになる。
nが奇数のときは
℘(nu)=℘(u)−℘′(u)2Pn+1Pn−1Pn2
nが偶数のときは
℘(nu)=℘(u)−Pn+1Pn−1℘′(u)2Pn2
これによって℘(nu)の式を求める問題は一般にPnを求めることに帰着されたが、そのPnを求めるには次のような方法による。
m、nを二つの異なる自然数とし、
℘(mu)−℘(u)=−ψm+1(u)ψm−1(u)ψm(u)2℘(nu)−℘(u)=−ψn+1(u)ψn−1(u)ψn(u)2
辺々引けば(右辺では(u)を略す)
℘(mu)−℘(nu)=−ψm+1ψm−1ψn2−ψn+1ψn−1ψm2ψm2ψn2
一方においてまた前回(1)によれば
℘(mu)−℘(nu)=−σ(¯m+nu)σ(¯m−nu)σ(mu)2σ(nu)2
したがって
℘(mu)−℘(nu)=−ψm+nψm−nψm2ψn2
(5)と(6)を比較すれば次の関係を得る、
ψm+nψm−n=ψm+1ψm−1ψn2−ψn+1ψn−1ψm2
特にm=n+1とすれば
ψ2n+1=ψn+2ψn3−ψn+13ψn−1
またm、nをそれぞれn+1、n−1とすれば
−℘′(u)ψ2n=ψn(ψn+2ψn−12−ψn+12ψn−2)
この最後の二式をPに関する公式に直せば次のようになる。
P2n+1={Pn+2Pn3−℘′(u)4Pn+13Pn−1(nは奇数)℘′(u)4Pn+2Pn3−Pn+13Pn−1(nは偶数)P2n=−Pn(Pn+2Pn−12−Pn+12Pn−2)
これによってn≦4のときのPnを知ればn>4のときの値は全て算出される。n≦4のときのPnは実際の計算によって次のようになることが知られる、
P1=1、P2=−1P3=3℘(u)4−32g2℘(u)2−3g3℘(u)−116g22P4=−2℘(u)6+52g2℘(u)4+10g3℘(u)3+58g22℘(u)2+12g2g3℘(u)+g32−132g23
これからただちに判る通り一般に
Pn=∑Cλ、μ、νg2λg3μ℘(u)ν(Cは有理定数)
で、ここにλ、μ、νは
2λ+3μ+ν={n2−12 (nが奇数のとき)n2−42 (nが偶数のとき)
を満たすあらゆる負でない整数値をとるものとする。
参考文献
参考文献は以下の通り。
[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。
[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。
[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001
[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49 ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。
[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017