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【大学院入試対策】ベクトル解析演習5

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ベクトル解析演習5

今回はベクトル解析における曲面の向きづけに関する問題演習をしましょう。

要点のまとめ

2変数のベクトル値関数$\bm{r}(u,v)=(x(u,v),y(u,v),z(u,v))$を考えます。$n$変数の場合も同様に拡張します。

このとき、$u,v$のベクトル値関数$\bm{r},\bm{r}_1,\bm{r}_2$、$u,v$の関数$f$、スカラー$\lambda,\mu$に対して、以下の式がそれぞれ成り立ちます。
\[
\dfrac{\partial}{\partial u}(\lambda\bm{r}_1+\nu\bm{r}_2)=\lambda\dfrac{\partial\bm{r}}{\partial u}+\mu\dfrac{\partial\bm{r}_2}{\partial u}~~~,~~~\dfrac{\partial}{\partial u}(f\bm{r})=\dfrac{\partial f}{\partial u}\bm{r}+f\dfrac{\partial\bm{r}}{\partial u}
\]

\[
\dfrac{\partial}{\partial u} (\bm{r}_1\cdot\bm{r}_2) = \dfrac{\partial\bm{r}_1}{\partial u}\cdot\bm{r}_2 + \bm{r}_1\cdot\dfrac{\partial\bm{r}_2}{\partial u}~~~,~~~\dfrac{\partial}{\partial u} (\bm{r}_1\times\bm{r}_2) = \dfrac{\partial\bm{r}_1}{\partial u}\times\bm{r}_2 + \bm{r}_1\times\dfrac{\partial\bm{r}_2}{\partial u}
\]

\[
\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial s} = \dfrac{\partial u}{\partial s}\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial u} + \dfrac{\partial v}{\partial s}\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial v}~~~,~~~\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial s}\times\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial t} = \dfrac{\partial (u,v)}{\partial (s,t)}\left( \dfrac{\partial \bm{r}}{\partial u} \times \dfrac{\partial \bm{r}}{\partial v} \right)
\]

また、2変数ベクトル値関数$\bm{r}(u,v)$が与える曲面を$S$とすると、$\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial u}\times\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial v}$は$S$の各点で$S$の法ベクトルになります。
\[
\bm{n} = \dfrac{\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial u}\times\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial v}}{\left|\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial u}\times\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial v}\right|}
\]
とおくと、$\bm{n}$は$S$の点$P$における単位法ベクトルで、$\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial u}\times\dfrac{\partial \bm{r}}{\partial v}$と同じ向きのものです。単位法ベクトルは$\pm\bm{n}$で与えられます。

向き付けについては次のように定義します。表裏の指定された曲面を向き付けられた曲面といいます。表を正の向き、裏を負の向きといわれることもあります。向き付けられた曲面$S$に対して法ベクトルが正の向きであるようなパラメータ$(u,v)$を向きに適合したパラメータといいます。

問題5

次の向き付けられた曲面を、向きに適合したパラメータで表示せよ。向きに適合している理由も述べること。
(1)
球面$x^2+y^2+z^2=4$。その正の向きは外側とする。

(2)
楕円柱面の一部$\{(x,y,z)|x^2+4y^2=1,x > 0, y > 0, 0 < z < 3\}$。その正の向きは領域$\{(x,y,z)|x^2+4y^2 > 1, x > 0, y > 0\}$のある方とする。

(3)
放物柱面$y^2=8x$の$0\leq y \leq 4, 0\leq z \leq 6$の部分。その正の向きは$y^2 < 8x$の方とする。

(4)
平面$2x+3y+6z=12$の$x \geq 0, y \geq 0, z\geq 0$の部分。その正の向きはこの平面で分けられる2つの領域の原点の無い方とする。また、そのパラメータの範囲$D$を不等式で表示せよ。

解答5

(1)
この球面のパラメーター表示として例えば
\[
\bm{r}(\theta,\varphi)=(2\sin{\theta}\cos{\varphi},2\sin{\theta}\sin{\varphi},2\cos{\theta}) (0<\theta<\pi,0\leq\varphi<2\pi) \] があるが、これは球面の向きに適したパラメーター表示である。何故なら今、球面上の任意の点Pから$xy$平面上に垂線をおろし、その足と$xy$平面の交点を$P'$としたときの$P'$と原点を結んで出来る直線上に$xy$平面の第一象限を正の向きとする$w$軸を設け、$\theta , \varphi$を設定すれば \[ \frac{\partial \bm{r}}{\partial \theta}\times\frac{\partial \bm{r}}{\partial \varphi}=4(\sin^2{\theta}\cos{\varphi},\sin^2{\theta}\cos{\varphi},\sin{\theta}\cos{\theta}) \] であり \[ \left\{ \begin{array}{rc} 0<\theta \leq \displaystyle\frac{\pi}{2}のとき&\sin{\theta}\cos{\theta}\geq 0\\ \displaystyle\frac{\pi}{2}< \theta <\pi のとき&\sin{\theta}\cos{\theta}<0\\ \end{array} \right. \] であるので、$z$成分は確かに向きに適合している。また、$\varphi$の定義域に注目すれば$x$成分と$y$成分も向きに適合していると直ちに分かる。従って先のベクトル値関数によって向きに適合したパラメーター表示がされていると言える。

(2)
この面のパラメーター表示として例えば
\[
\bm{r}(\theta,h)=\left(\cos{\theta},\frac{1}{2}\sin{\theta},h\right) \left(0 < \theta < \frac{1}{2}\pi, 0 < h < 3\right) \] があるが、これは面の向きに適したパラメーター表示である。何故なら今、$\theta , h$を設定すれば \[ \frac{\partial \bm{r}}{\partial \theta}\times\frac{\partial \bm{r}}{\partial h}=\left(\frac{1}{2}\cos{\theta},\sin{\theta},0\right) \] であり$0< \theta < \displaystyle\frac{1}{2}\pi$より \[  \frac{\partial \bm{r}}{\partial \theta}\times\frac{\partial \bm{r}}{\partial h} \] の$x$成分と$y$成分はそれぞれ$\frac{1}{2}\cos{\theta}>0,\sin{\theta}>0$を満たす。従って先のベクトル値関数によって向きに適合したパラメーター表示がされていると言える。

(3)

この面のパラメーター表示として例えば
\[
\bm{r}(t,u)=\left(\frac{1}{8}t^2,t,u\right) (0\leq t \leq4,0\leq u \leq6)
\]
があるが、これは面の向きに適したパラメーター表示である。何故なら今、$t , u$を設定すれば
\[
\frac{\partial \bm{r}}{\partial t}\times\frac{\partial \bm{r}}{\partial u}=\left(1,-\frac{1}{4}t,0\right)
\]
であり、これは明らかに向きに適合している。従って先のベクトル値関数によって向きに適合したパラメーター表示がされていると言える。

(4)

点$O’,A,B$及び パラメーター$s,t (0\leq s\leq1 , 0\leq t\leq1)$を定めれば
\[
\overrightarrow{OO’}=(0,0,2) , \overrightarrow{O’A}=(6,0,-2) , \overrightarrow{O’B}=(0,4,-2)
\]
であるので平面$2x+3y+6z=12 (x\geq 0, y\geq 0, z\geq 0)$と同等である$\Delta O’AB$内の点Pは
\[
\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OO’}+(1-s)\overrightarrow{O’A}+st\overrightarrow{O’B}=\Big(6(1-s),4st,2s(1-t)\Big)
\]
このことから今考えている平面のパラメーター表示として
\[
\bm{r}(t,s)=\Big(6(1-s),4st,2s(1-t)\Big)
\]
があると予想できる。
\[
\frac{\partial \bm{r}}{\partial t}\times\frac{\partial \bm{r}}{\partial s}=(8s,12s,24s)=4s(2,3,6)
\]
であり$4s\geq 0$なので確かに$\bm{r}(t,s)$は向きに適合したパラメータ表示であると言える。また、$D=\{(t,s)| 0\leq t \leq 1 , 0\leq s \leq 1\}$である(境界含む)。

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