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【電磁気学】第22講 Dirac のデルタ関数①ー概要

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ˆr/r2の発散

以下のようなベクトル関数の発散を考えよう。

v=1r2ˆr

図1.44のように、いかなる場所でもvは動径外向き方向を向いている。もしこのベクトル関数が正の大きな発散を持っているのであればその通りであるのだが、実は(71)を用いて計算できるように、この発散を計算すると0になってしまう。

v=1r2r(r21r2)=1r2r(1)=0

このベクトル関数に発散定理を適用すると、プロットは密になる。中心が原点に一致している半径Rの球で積分すると仮定すると、このときの面積分は、

vda=(1R2ˆr)(R2sinθdθdϕˆr)=(π0sinθdθ)(2π0dϕ)=4π

となる。しかし、体積積分dτは(84)を信じると0と分かる。これは発散定理が誤っていることを意味するのだろうか?ここで何が起こっているのだろうか?

 


図1.44

事の発端はr=0の点にある。この点ではvは発散しているが、(84)では、これにより意図せず0で割り算を行っていることになっている。v=0が原点を除いて正しいということは確かだが、原点における場合はより複雑な問題となる。面積分は(85)は半径Rの値とは関係がないということ、つまり、発散定理が正しければ中心が原点に位置しているようないかなる球でもvdτ=4πという値を得ることになることに注意せよ。球がどんなに小さくても良いのであるから、明らかに、全体の寄与はr=0の点に由来しているものであることになる。故に、vは原点という1点を除いて0となるのにその積分は(積分領域に原点を含んでいれば)4πという値になるという、奇怪な性質を持つことになる。通常の関数でこのような振る舞いを見せる関数は存在しない。他方で、物理的な例としては、質点の密度(単位体積当たりの質量)などが挙げられる。ここでつまずいてしまっている問題を解決するための関数は、物理学者の間ではDirac のデルタ関数(Dirac delta function)という数学的対象として知られている。これは理論物理学の様々なところで用いられている。更に、今考えているベクトル関数ˆr/r2の発散という問題は不可解な好奇心による問題ではなく、実は、電磁気学の理論において中心となると言っても過言ではないくらい重要な問題である。従って、ここではこのDirac のデルタ関数とそれに関連する事柄について見ておくことにする。

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