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第18講:$\wp$関数2

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$\wp$関数の性質

前回与えた定義から容易に得られる諸性質をまとめておきましょう。
 
(I) $m$を$0$でない任意の定数とすれば
\begin{eqnarray*}
\wp\left(mu\left|2m\omega_1,2m\omega_3\right.\right)&=&m^{-2}\wp\left(u\left|2\omega_1,2\omega_3\right.\right)\\
\wp’\left(mu\left|2m\omega_1,2m\omega_3\right.\right)&=&m^{-3}\wp\left(u\left|2\omega_1,2\omega_3\right.\right)
\end{eqnarray*}
すなわち$\wp,\wp’$は$u,\omega_1,\omega_3$に関してそれぞれ$-2$次及び$-3$次の同次関数です。

(II) $\wp\left(u\right)$を$u$の冪級数に展開すれば
\[
\wp\left(u\right)=\frac{1}{u^2}+c_0+c_1u^2+c_2u^4+\cdots+c_nu^{2n}+\cdots
\]
の形となることは明らかで、
\[
c_0=\left[{\sum}’\left\{\frac{1}{\left(u-w\right)^2}-\frac{1}{w^2}\right\}\right]_{u=0}=0
\]
また$n\gt0$のときは
\begin{eqnarray*}
c_n&=&\frac{1}{\left(2n\right)!}\left[\frac{d^{2n}}{du^{2n}}{\sum}’\left\{\frac{1}{\left(u-w\right)^2}-\frac{1}{w^2}\right\}\right]_{u=0}\\
&=&\left(2n+1\right){\sum}’\frac{1}{w^{2n+2}}
\end{eqnarray*}
です。しかし通常$c_1$及び$c_2$の代わりにはそれぞれ
\begin{eqnarray*}
g_2&=&20c_1=60{\sum}’\frac{1}{w^4}\\
g_3&=&28c_2=140{\sum}’\frac{1}{w^6}
\end{eqnarray*}
の二数が用いられます。すなわち
\begin{eqnarray*}
\wp\left(u\right)&=&\frac{1}{u^2}+\frac{g_2}{20}u^2+\frac{g_3}{28}u^4+\cdots\\
\wp’\left(u\right)&=&-\frac{2}{u^3}+\frac{g_2}{10}u+\frac{g_3}{7}u^3+\cdots
\end{eqnarray*}

(III) 今得た関数の展開式の各主部(すなわち第一項)を消去するために$4\wp\left(u\right)^3-\wp’\left(u\right)^2$を作ってみると
\[
4\wp\left(u\right)^3-\wp’\left(u\right)^2=\frac{g_2}{u^2}+g_3+\left(u^2以上の項\right)
\]
となって、$\displaystyle\frac{1}{u^2}$の項をもちます。よってさらにこれから$g_2\wp\left(u\right)$を引くと
\[
4\wp\left(u\right)^3-\wp’\left(u\right)^2-g_2\wp\left(u\right)=g_3+\left(u^2以上の項\right)
\]
となります。この左辺は一つの楕円関数で、$w$以外の点では正則です。また右辺から考えるとこの関数は$u=0$において正則です。従って、$0$と一緒となる全ての周期点においても正則でなければなりません。結局この楕円関数は整関数であるということになります。従ってそれは定数でなければなりません(前回の定理3)。その定数の値は$u=0$とおいてみると$g_3$となることが分かります。よって次の重要な公式(すなわち$\wp\left(u\right)$の満足する微分方程式)を得ることができます。
\[
\wp’\left(u\right)^2=4\wp\left(u\right)^3-g_2\wp\left(u\right)-g_3
\]

(IV) $\wp\left(u\right)=z$とすれば、今得た結果により
\[
\frac{dz}{du}=\sqrt{4z^3-g_2z-g_3}
\]
となります。そして$u=0$は$z=\infty$に対応するから
\[
u=\int_\infty^z\frac{dz}{\sqrt{4z^3-g_2z-g_3}}
\]
の関係があります。すなわち$\wp\left(u\right)$はこのような形の第一種楕円積分の逆関数に当たるということになります(ちょうど$\mathrm{sn}\ u$が$\displaystyle u=\int_0^z\frac{dz}{\sqrt{\left(1-z^2\right)\left(1-k^2z^2\right)}}$の逆関数であるように)。

注意:この積分の形をWeierstrassの第一種の標準形という。これに対応する第二種及び第三種はそれぞれ
\[
\int\frac{zdz}{\sqrt{4z^3-g_2z-g_3}},\ \ \ \int\frac{zdz}{\left(z-a\right)\sqrt{4z^3-g_2z-g_3}}
\]
である。

(V) $\wp\left(u\right)$は第二位だから周期平行四辺形内においてすべての値を各二度ずつとることになります(前回の定理5)。すなわちその周期性によって一般に
\[
\wp’\left(u+2\omega_i\right)=\wp’\left(u\right)\hspace{1cm}\left(i=1,2,3\right)
\]
だから、ここで$u=-\omega_i$とおけば
\[
\wp’\left(\omega_i\right)=\wp’\left(-\omega_i\right)=-\wp’\left(\omega_i\right)
\]
そして$\omega_i$は周期点でないから$\wp’\left(\omega_i\right)$は有限値です。ゆえに
\[
\wp’\left(\omega_i\right)=0\hspace{1cm}\left(i=1,2,3\right)
\]
すなわち$\wp’\left(u\right)$の零点は半周期の点にあるので、一つの周期平行四辺形に属するものは三つずつあると言えます。例えば基本周期平行四辺形に属するものは$\omega_1,-\omega_2,\omega_3$です。$\wp’\left(u\right)$は第三位の楕円関数であるからこの三つの零点は各々第一位でなければならないのです。

(VI) 今
\[
\wp’\left(u\right)^2=4\wp’\left(u\right)^3-g_2\wp\left(u\right)-g_3
\]
この右辺を$\wp\left(u\right)$に関して一次因数に分解し、その結果を
\[
\wp’\left(u\right)^2=4\left\{\wp\left(u\right)-e_1\right\}\left\{\wp\left(u\right)-e_2\right\}\left\{\wp\left(u\right)-e_3\right\}
\]
としてみます。さて、ここで$u=\omega_i\ \left(i=1,2,3\right)$とおいてみると、$\wp’\left(\omega_i\right)=0$だから
\[
\wp\left(\omega_i\right)-e_1=0\ 又は\ \wp\left(\omega_i\right)-e_2=0\ 又は\ \wp\left(\omega_i\right)-e_3=0
\]
でなければなりません。今仮に$\wp\left(\omega_i\right)-e_1=0$とすれば、これは第二位の$0$です。なぜなら、$\wp’\left(\omega_i\right)=0$でそして$\wp\left(u\right)$は第二位の楕円関数だからです。同じく第二位ということから、同じ$\omega_i$に対して$\wp\left(\omega_i\right)-e_1=0$と同時に$\wp\left(\omega_i\right)-e_2=0$又は$\wp\left(\omega_i\right)-e_3=0$となることは不可能です。よって三つの$\wp\left(\omega_i\right)\ \left(i=1,2,3\right)$は一つずつ$e_1,e_2,e_3$のいずれかに等しいことが分かります。$e$の番号の付け方について今後
\[
\wp\left(\omega_1\right)=e_1,\ \ \ \wp\left(\omega_2\right)=e_2,\ \ \ \wp\left(\omega_3\right)=e_3
\]
とすることに定めることにします。これらの間には次の関係があります。
\begin{eqnarray*}
&e_1+e_2+e_3=0&\\
&e_2e_3+e_3e_1+e_1e_2=-\frac{1}{4}g_2&\\
&e_1e_2e_3=\frac{1}{4}g_3&
\end{eqnarray*}

(VII) 再び前の式
\[
\wp’\left(u\right)^2=4\wp\left(u\right)^3-g_2\wp\left(u\right)-g_3
\]
に戻って、これを$u$で逐次に微分し、必要に応じて適宜に簡約すれば次の諸式を得ます。
\begin{eqnarray*}
\wp^{”}\left(u\right)&=&6\wp\left(u\right)^2-\frac{1}{2}g_2\\
\wp^{”’}\left(u\right)&=&12\wp\left(u\right)\wp’\left(u\right)\\
\wp^{””}\left(u\right)&=&120\wp\left(u\right)^3-18g_2\wp\left(u\right)-12g_3\\
& &\cdots\cdots\cdots\cdots\cdots\cdots
\end{eqnarray*}

一般に$\wp^{\left(n\right)}\left(u\right)$は$n$が偶数のときは$\wp\left(u\right)$の有理整式、$n$が奇数のときは$\wp\left(u\right)$の有理整式と$\wp’\left(u\right)$の積であることが数学的帰納法より直ちに分かります。
 
 

(VIII) 今得た式の中
\[
\wp^{”’}\left(u\right)=12\wp\left(u\right)\wp’\left(u\right)
\]
をとって、
\[
\wp\left(u\right)=\frac{1}{u^2}+c_1u^2+c_2u^4+\cdots+c_nu^{2n}+\cdots
\]
を代入し、両辺における$u^{2n-3}$の係数を比較し、その結果を整頓すれば次の式を得ることもできます。
\[
\left(n-2\right)\left(2n+3\right)c_n=3\left(c_1c_{n-2}+c_2c_{n-3}+\cdots+c_{n-3}c_2+c_{n-2}c_1\right)
\]
これによって$c_1,c_2$を用いて$c_3,c_4,\cdots$を逐次に算出することができます。従って、$c_n\ \left(n\geqq3\right)$は全て$g_2,g_3$の有理整式として表されます。例えば
\[
c_3=\frac{{g_2}^2}{1200},\ \ \ c_4=\frac{3g_2g_3}{6160},\ \ \ c_5=\frac{49{g_2}^3+750{g_3}^2}{7644000},\ \cdots
\]
などとなります。

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