σ関数
以前、℘(u)からζ(u)を導いたのと同様の手段をζ(u)に適用してみましょう。
∫u0{ζ(u)−1u}du=∫u0∑′{1u−w+1w+uw2}du=∑′{logu−w−w+uw+u22w2}
今度はlogが出て来たので、これを消すために全体の指数関数を作ると
exp∑′{logu−w−w+uw+u22w2}=∏′{(1−uw)euw+u22w2}
この無限乗積で表されるuの関数は0以外のwの点で一位の零点をもちます。もしu=0でも一位の零点をもたせようとするなら、これにuの因数を掛けておけば良いです。よって、ここに
σ(u)=u∏′{(1−uw)euw+u22w2}
という形の新しい関数を作ります。
以上の手順から明らかな通り、σ(u)とζ(u)の間には次の関係があることが分かります。
σ(u)=uexp[∫u0{ζ(u)−1u}du]logσ(u)=logu+∫u0{ζ(u)−1u}duζ(u)=ddulogσ(u)=σ′(u)σ(u)
σ(u)は今までの℘(u)やζ(u)と違ってu=wの点において極をもたず、またw以外の有限点ではもちろん正則だから、結局σ(u)は整関数であることになります。これは楕円関数ではありません。なお、σ(u)が奇関数であること、及び
limu→0σ(u)u=1
であること等は(1)からただちに分かります。よって、
σ(u)=u+c3u3+c5u5+⋯
とおいて(2)の右辺に入れ、前回得たζ(u)の展開式と比較すれば
c3=0, c5=−g2240, c7=−g3840, ⋯
等の値を得ることができます。
次には周期に対する性質を調べましょう。但し、上述のようにσ(u)は楕円関数ではないため真の意味における周期であるものは存在しませんが、従来の2ω1,2ω3(一般にはw)のことをやはりσ(u)の周期と呼ぶことにします。
ζ(u)に関しては以前導いたように
ζ(u+2ω1)=ζ(u)+2η1
の公式が成立します。
この両辺をuに関して積分すれば、(2)より、
logσ(u+2ω1)=logσ(u)+2η1u+c(cは定数)
を得ます。従って、
σ(u+2ω1)=Ce2η1uσ(u)(Cは定数)
となることが分かります。Cを決定するためにu=−ω1とおけば
σ(ω1)=Ce−2η1ω1σ(−ω1)=−Ce−2η1ω1σ(ω1)
ここでσ(ω1)≠0だから、これからC=−e2η1ω1を得ることもできます。従って、次の公式を導くことができます。
σ(u+2ω1)=−e2η1(u+ω1)σ(u)
同様に
σ(u+2ω3)=−e2η3(u+ω3)σ(u)
(3)、(4)を反復して組み合わせればさらに一般の次の公式を得ることになります。
σ(u+2h1ω1+2h3ω3)=(−1)h1+h3eEσ(u)
ただし、
E=2(h1η1+h3η3)(u+h1ω1+h3ω3)+2h1h3(η1ω3−η3ω1)
この最後の項はLegendre の関係式を利用すればh1h3πiにすることが出来る項です。
参考文献
参考文献は以下の通り。
[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。
[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。
[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001
[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49 ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。
[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017