σ1、σ2、σ3関数
v=ωi(i=1、2、3)とおけば
℘(u)−ei=−σ(u−ωi)σ(u+ωi)σ(u)2σ(ωi)2
となる。するとσ関数の性質により
σ(u+2ωi)=−e2ηi(u+ωi)σ(u)
であるから、ここでuをu−ωiに変えれば
σ(u+ωi)=−e2ηiuσ(u−ωi)
したがって上の式は次のように書き直される。
℘(u)−ei=e2ηiuσ(u−ωi)2σ(u)2σ(ωi)2=e−2ηiuσ(u+ωi)2σ(u)2σ(ωi)2
ゆえに
√℘(u)−ei=±eηiuσ(u−ωi)σ(u)σ(ωi)=±e−ηiuσ(u+ωi)σ(u)σ(ωi)
この左辺は一見したところ二価関数のようであるのに関わらず右辺の方から考えると実は二つの一価関数を表すのである。
ここで次のような新関数σi(i=1、2、3)を定義する。
σi(u)=−eηiuσ(u−ωi)σ(ωi)またはσi(u)=e−ηiuσ(u+ωi)σ(ωi)}
この二式が内容において同一であることは(1)によって明らかである。この関数を用いれば
℘(u)−ei=σi(u)2σ(u)2
となる、そうしてこれに冠した根号の意味は
√℘(u)−ei=σi(u)σ(u)
と定める。
さてすでに知られるように
℘′(u)2=4{℘(u)−e1}{℘(u)−e2}{℘(u)−e3}
であるから、この両辺を平方に開けば
℘′(u)=±2√℘(u)−e1√℘(u)−e2√℘(u)−e3=±2σ1(u)σ2(u)σ3(u)σ(u)σ(u)σ(u)
左辺は一価関数であるから、右辺の根号はいずれか一方に定まるべきである。例によって両辺をuの冪級数に展開してその係数を比較すれば、負号をとるべきことが判る。ゆえに
℘′(u)=−2σ1(u)σ2(u)σ3(u)σ(u)3
一方において、(3)の両辺を微分すれば
℘′(u)=2σi(u)σ(u)dduσi(u)σ(u)
これと(5)を比較すれば次の結果を得る、
dduσi(u)σ(u)=−σj(u)σk(u)σ(u)2
ただしi、j、kはそれぞれ1、2、3を一つずつ代表するものとする。さらに
σ(u)σi(u)=1÷σi(u)σ(u)、 σi(u)σj(u)=σi(u)σ(u)÷σj(u)σ(u)
となることに注意し、また
ei−ej={℘(u)−ej}−{℘(u)−ei}=σj(u)2−σi(u)2σ(u)2
となることを利用して計算すれば、次の結果を得る、
dduσ(u)σi(u)=σj(u)σk(u)σi(u)2dduσi(u)σj(u)=−(ei−ej)σ(u)σk(u)σj(u)2}
さてここにおいて
S(u)=σ(u)σ3(u)、 C(u)=σ1(u)σ3(u)、 D(u)=σ2(u)σ3(u)
とおけば、(7)により
{C(u)2=1−(e1−e3)S(u)2D(u)2=1−(e2−e3)S(u)2
また(8)により
{dduS(u)=C(u)D(u)dduC(u)=−(e1−e3)S(u)D(u)dduD(u)=−(e2−e3)S(u)C(u)
これらの関係は15回に述べたsn、cn、dnの間の関係に彷彿させるものがあることはただちに確認できるだろう。
今上のS(u)を微分した式を書き直せば
du=dS(u)C(u)D(u)=dS(u)√{1−(e1−e3)S(u)2}{1−(e2−e3)S(u)2}
となる。そこで
√e1−e3S(u)=z、 √e1−e3u=w、 e2−e3e1−e3=k2
とおけば、
dw=dz√(1−z2)(1−k2z2)
の関係を得る、そうしてw=0のときz=0である。よってzはsn wに他ならないことを知る、すなわち
sn w=√e1−e3σ(u)σ3(u)=√e1−e3σ(w√e1−e3)σ3(w√e1−e3)
これでsn関数がσによって表されたのである。さて
√e1−e3S(u)=sn w
となることが判ればしたがって
C(u)2=1−(e1−e3)S(u)2=1−sn2w=cn2wD(u)2=1−(e2−e3)S(u)2=1−k2sn2w=dn2w
かつu→0のときC(u)→1、D(u)→1であるから、
C(u)=cn w、 D(u)=dn w
となることを知る。すなわち
cn w=σ1(u)σ3(u)、 dn w=σ2(u)σ3(u)
である。
さてsn wが与えられたとすればその基本周期は既知と考えてよい、これを4K、2iK′とする。一方においてσ(u)及びσ3(u)の周期に対する性質をみると、
{σ(u+2ω1)=−e2η1(u+ω1)σ(u)σ(u+2ω3)=−e2η3(u+ω3)σ(u){σ3(u+2ω1)=e2η1(u+ω1)σ3(u)σ3(u+2ω3)=−e2η3(u+ω3)σ3(u)
この最後の二式はσの定義とσの性質から証明される。したがって
σ(u+2ω1)σ3(u+2ω1)=−σ(u)σ3(u)、 σ(u+2ω3)σ3(u+2ω3)=σ(u)σ3(u)
ゆえにσ(u)σ3(u)の周期は4ω1、2ω3である。そこで今
K=ω1√e1−e3、 iK′=ω3√e1−e3
となるようなω1、ω3を採用したとすれば二つの関数
sn(u√e1−e3)、 √e1−e3σ(u)σ3(u)
は同一の周期をもつ楕円関数で極及び零点がすべて一致し、かつその比はu→0のとき1に収束する。ゆえにちょうど(10)が成立することになる。
次に逆に℘の方をsnで表すことを考えよう。
(3)においてi=3とすれば
℘(u)−e3=σ3(u)2σ(u)2=e1−e3sn2w
したがって
℘(u)=(e1−e3)(1sn2w+e3e1−e3)=(e1−e3)(1sn2w−1+k23)
これを通常
℘(u)=(Kω1)2(1sn2w−1+k23)
と書く。
参考文献
参考文献は以下の通り。
[1]竹内端三,『楕円関数論』,岩波書店,1936
出版社在庫無し、著作権消失済み。
[2]E.T. Whittaker, et al., A Course of Modern Analysis (AMS PRESS, 1927)
著作権消失済み。
[3]戸田盛和,『楕円関数入門』,日本評論社,2001
[4]戸田盛和,『臨時別冊・数理科学SGC ライブラリ49 ソリトンと物理学』,サイエンス社,2006
同出版社より電子書籍の形で復刊済み。
[5]Landau・Lifshitz,『力学』,東京図書,2017