$\def\bm#1{{\boldsymbol{#1}}}
\def\coloneqq{{:=}}
\newcommand{\rmd}{\mathrm{d}}$
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\newcommand{\rmd}{\mathrm{d}}$
$d>2$次元における共形代数
$d>2$の場合、共形Killing 方程式(51)は、もし$\epsilon(x)$が高々$x$の2次までなら解くことが出来る。従って、以下のように書くことが出来る。
\begin{equation}
\epsilon^\mu(x)=a^\mu+{\omega^\mu}_\nu x^\nu+\lambda x^\mu+b^\mu x^2-2(b\cdot x)x^\mu\tag{52}
\end{equation}
但し、$(b\cdot x)$、$x^2$は短縮記法で$b_\mu x^\mu$、$x_\mu x^\mu$である。$\epsilon^\mu$が(52)を満たすとき、$\sigma=\lambda-2b\cdot x$を得る。$a^\mu$、$\omega^\mu_\nu$、$\lambda$、そして$b^\mu$はどれも有限個の成分を持っているということに注意が必要である。従って、共形代数やそれに関連する対称な群は有限次元である。各パラメーターの幾何学的な翻訳は表3.3に与えられている。
表3 $d>2$次元の場合における共形変換
名称 | $\epsilon^\mu(x)$ | $\sigma(x)$ | 演算子 |
並進 | $a^\mu$ | $0$ | $P_\mu$ |
Lorentz 変換 | $\omega^\mu_\nu x^\nu$、$\omega_{\mu\nu}=-\omega_{\nu\mu}$ | $0$ | $J_{\mu\nu}$ |
スケール変換 | $\lambda x^\mu$ | $\lambda$ | $D$ |
特殊共形変換 | $b^\mu x^2-2(b\cdot x)x^\mu$ | $-2(b\cdot x)$ | $K_\mu$ |
$a_\mu$、$\omega_{\mu\nu}$に対応する生成子は運動量ベクトル$P^\mu$と$J^{\mu\nu}$である。これらに加えて、$\lambda$でパラメトライズされているスケール変換に対応する新たな演算子$D$と特殊共形変換$K^\mu$も考える。$J^{\mu\nu}$、$P^\mu$、$D$、$K^\mu$で構成されている共形代数はPoincare 代数(4)と(37)に加えて次の関係式も満たす。
\begin{equation}
\left\{
\begin{array}{rclcrcl}
{[J_{\mu\nu},K_\rho]}&=&i(\eta_{\mu\rho}K_\nu-\eta_{\nu\rho}K_\mu)&&{[D,P_\mu]}&=&iP_\mu\\
&&&&&&\\
{[D,K_\mu]}&=&-iK_\mu&&{[D,J_{\mu\nu}]}&=&0\\
&&&&&&\\
{[K_\mu,K_\rho]}&=&0&&{[K_\mu,P_\nu]}&=&-2i(\eta_{\mu\nu}D-J_{\mu\nu})
\end{array}
\right.\tag{53}
\end{equation}
共形代数の交換関係を更に調べてみよう。特に、生成子$J^{\mu\nu}$は部分代数としてLorentz 代数$\mathfrak{so}(d-1,1)$を構成する。実は、共形代数の生成子は、共形代数が代数$\mathfrak{so}(d,2)$であるということから群を成す。$\mathfrak{so}(d,2)$の$d$は$1,\cdots,d-1$と対応していて、$2$は$d,d+1$と対応している。$\bar{J}_{AB}=-J_{BA}$で書かれるような$\mathfrak{so}(d,2)$の生成子は、(4)のような代数関係を満たす。但し、このとき、$A$、$B$は$0$から$d+1$まで走り、$\eta=\mathrm{diag}(-1,\cdots,1,1)$は$\bar{\eta}=\mathrm{diag}(-1,1,\cdots,1,-1)$に置き換わる。特に、生成子$\bar{J}^{\mu\nu}=:J^{\mu\nu}~(\mu,\nu\in\{0,\cdots,d-1\})$はLorentz 群の生成子であるし、通常の交換関係(4)を満たす。
共形代数(53)を代数$\mathfrak{so}(d,2)$へ写すためには、$\mathfrak{so}(d,2)$の残りの生成子$\bar{J}_{\mu d}$、$\bar{J}_{\mu(d+1)}~(\mu\in\{0,\cdots,d-1\})$と$\bar{J}_{d(d+1)}$、共形代数の生成子$D$、$P_\mu$、$K_\mu$の間の写像を構築する必要がある。生成子$\bar{J}_{d(d+1)}$はLorentz 変換$\mathfrak{so}(d-1,1)$の下でスカラーとして変換するので、故に$J_{\mu\nu}~(\mu,\nu\in\{0,\cdots,d-1\})$と交換する必要がある。従って、
\begin{equation}
\bar{J}_{d(d+1)}=-D\tag{54}
\end{equation}
と同定することが出来る。更に、$\bar{J}_{\mu d}$と$\bar{J}_{\mu(d+1)}$はLorentz 変換$\mathfrak{so}(d-1,1)$の下でベクトルとして変換するので、$P_\mu$、$K_\mu$と関連付けられる。これは次のように正確に同定出来る(問題)。
\begin{equation}
\bar{J}_{\mu d}=\dfrac{1}{2}(K_\mu-P_\mu) 、 \bar{J}_{\mu(d+1)}=\dfrac{1}{2}(P_\mu+K_\mu) \mu\in\{0,\cdots,d-1\}\tag{55}
\end{equation}
問題
同定した(54)、(55)の下で、共形代数は$\mathfrak{so}(d,2)$で書けることを示せ。
問題
符号$(p,q)$の、すなわち、$\eta$が固有値$+1$を$p$個と固有値$-1$を$q$個持つような、平らな時空の共形変換を考えた場合、共形代数が$\mathfrak{so}(p+1,q+1)$で与えられることを示せ。特に、$d$次元Euclid 時空での共形代数が$\mathfrak{so}(d+1,1)$で与えられることを示せ。
次に、先ほど考えた微小変換に加えて、有限の変換についても考えてみよう。特にスケール変換(パラメーター$\lambda$は今、微小ではなく有限である。)と特殊共形変換(パラメーター$b^\mu$)
\begin{equation}
x^\mu\mapsto\lambda x^\mu\tag{56}
\end{equation}
\begin{equation}
x^\mu\mapsto\dfrac{x^\mu+b^\mu x^2}{1+2b\cdot x+b^2x^2}\tag{57}
\end{equation}
に興味がある。有限の共形変換においては、次のような反転というものを導入するのが便利である。
\begin{equation}
x^\mu\mapsto x’^\mu=\dfrac{x^\mu}{x^2}\tag{58}
\end{equation}
特殊共形変換と反転は大域的に定義されていないことに注意しよう。反転に関して言えば、$x^2=0$を満たす点は平らなEuclid 時空やMinkowski 時空に属していない無限遠に写される。同じことは特殊共形変換にも言える。与えられたベクトル$b^\mu$に関して、$1+2b\cdot x+b^2x^2=0$を満たす全ての点$x$は無限遠に写される。特殊共形変換を大域的に定義するためには、我々の平らな時空に点を加える必要がある。厳密に言うと、$\mathbb{R}^d$または$\mathbb{R}^{d-1,1}$の共形コンパクト化を考える必要があると言うことである。共形コンパクト化を得るためには、平らなEuclid 時空$\mathbb{R}^d$の場合は、方程式$x^2\coloneqq\delta_{\mu\nu}x^\mu x^\nu=0$を満たすのは$x=0$だけだから無限遠点を$1$つ加えるだけで良い。しかし、平らなMinkowski 時空$\mathbb{R}^{d-1,1}$の場合は、方程式$x^2\coloneqq\delta_{\mu\nu}x^\mu x^\nu=0$を満たす全ての点、すなわち、$\mathbb{R}^{d-1,1}$における点$x=0$の光円錐を加える必要がある。
変換(58)は単位元に繋がっていないから、$O(d,2)$ではなく$SO(d,2)$の要素である。しかし、偶数回の反転を伴うような変換の組合せは単位元に関連した共形変換を再び生じる。これは次の演習問題で説明される。